観光公害で市民がバスに乗れない京都、平気なウィーン 違いはどこに

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聞き手・構成 日比野容子
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 市バスが混雑して市民が乗れないなど、訪日外国人観光客が戻った京都市内では、公共交通を巡る様々な問題が起きている。解決への処方箋(せん)はあるのか。オーストリア・ウィーン工科大学交通研究所で研究中の宇都宮浄人・関西大学経済学部教授(交通経済学)に聞いた。

 ――ウィーンではどんな研究をされていますか。

 主に公共交通の計画・運営を研究しています。日本で公共交通と言うと、採算性の議論が中心になりがちですが、欧州では街づくりに欠かせないツールとして位置づけられています。

 ――ウィーンの交通事情を教えて下さい。

 非常に充実しています。地下鉄が5系統で総延長83キロ、路面電車が171キロ、バスは880キロ。JRに相当する連邦鉄道などの路線網もあります。路面電車は一部を除いて専用の軌道を走り、ほぼ正確にやって来ます。投資には非常に積極的で、地下鉄や路面電車の延伸も次々と実施。車がなくともあまり不自由しないとも言えるでしょう。

 バリアフリー化も進んでいます。バスはすべて低床車両で、地下鉄は到着時に車両とホームの橋渡しをするステップが自動で出てきて、車椅子の人も介助なしで乗降可能です。路面電車は接近中の車両がバリアフリー対応かどうか電停に表示されます。自転車専用道の整備も進み、自動車が通る空間はどんどん制限されつつあるのが現状です。

 一方、タクシーの台数は決して多くありません。でも公共交通が充実しているのであまり問題になりません。

 ――運賃はどうでしょう。

 目的地までの一方向であれば、2時間の有効時間内は連邦鉄道、地下鉄、バス、路面電車のいずれも乗り換え自由の1回券が2・4ユーロ(日本円で約400円)。230円均一で市バスに乗れる京都からすれば、割高に感じるかもしれません。

 でも、京都と違うところは…

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    倉田徹
    (立教大学法学部教授)
    2024年5月7日12時0分 投稿
    【視点】

    単独で200万人弱の都市として存在しているウイーンと、2000万人近い人口を抱える京阪神の巨大都市圏の一角を占める京都の交通需要を単純に比較することはできませんから、記事のタイトルには多少疑問を感じます。しかし、それを差し引いても、公共交通

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2024年5月8日0時19分 投稿
    【視点】

    素人考えながら、京都や鎌倉のような歴史のある街は中心部は自動車乗り入れ原則禁止にして路面電車を充実させる方が、輸送力増強だけでなく景観や環境保全の点からも良いように思う。地下鉄は費用がかかるし、京都は地下を掘ると遺跡が何かしら出てくるので工

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