33歳のNewsPicks編集長「新しい発明を探索」動画で新境地

西尾邦明
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 ニュースサイトから選ばれた記事と、専門家やユーザーのコメントを一緒に楽しめる経済ニュースアプリ「NewsPicks(ニューズピックス)」。誕生から10年が過ぎ、新しい価値を模索している編集部を率いるのが、昨年7月に32歳の若さで編集長に就いた泉秀一氏(33)だ。

 【特大企画】地球を救う『イカれたやつら』を追う――。こう銘打って、昨年10月に編集部が自前の特集として配信したのが「地球極限GREEEN(グリーン)イノベーションジャーニー」だ。脱炭素をめぐる世界の最前線を記者が旅する企画で、全6回のうち5回が30分ほどの動画。初の長編ドキュメンタリーだ。

 北欧アイスランドにある大気中の二酸化炭素を直接回収して地中に隔離する施設や、オランダ沖の世界最大の洋上風力発電など5カ国を巡る。ストライキで電車に乗れずあたふたする記者の様子などYouTuber(ユーチューバー)のようなカジュアルさも採り入れた。

 動画への注力について、泉氏は「ユーザーとして必然だと思いませんか」と話す。スマホや5G(高速通信)で環境は整い、自身もテキストで読むハードルが高くなっているという。記者が取材している強みと動画の掛け合わせで何ができるかを日々考えていると言い、「失敗しても、それを糧に成功するまで続ける」と強調する。

 編集長として特ダネも重視するが、大手メディアとは少し異なる。「スクープは取ることが目的ではない。大切なのは、それが世の中にまだない新しいもので、ユーザーがお金を払っても読みたいものなのかどうかだ」。翌日に発表される特ダネより、新しい切り口を意識しているという。

 たとえば、6月に企画した特集「コピペ一発!GPT」は大きな反響があった。生成AIのGPTが注目されたのは2月ごろだが、「実際に触ると『この程度かぁ。仕事でどう使うんだよ』と思った人も少なくなかった」。実は使い方が少し間違っているかもしれず、正しいプロンプト(指示)をコピペし、中の文言を自分用にアレンジして使ってみよう、という内容だ。

 「記者のマーケット感覚が『ドはまり』し、ニーズがあるのにそうしたコンテンツは世の中になかったわけですから、立派なスクープだ」

 10年前にスマホに特化し、図解を多用した新しい形で、最先端の経済テーマを伝え始めたNewsPicks。「その後に新しい『発明』ができていないことは課題で、動画にしろテキストにしろ、新しい表現を探索していきたい」。若き編集長は未来を見据える。(西尾邦明)

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