昨夏甲子園準Vの下関国際が敗退 背負った「次の代」の責任と誇り

山野拓郎 松下秀雄
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(22日、第105回全国高校野球記念山口大会準々決勝 南陽工1―0下関国際)

 昨夏の全国選手権で準優勝し、甲子園に旋風を巻き起こした下関国際が姿を消した。松谷徹平主将(3年)は「全国から注目され、『次の代』という責任とプライドもあった。絶対あの舞台(甲子園)に登って勝たないといけないと何回も話してきたが、果たせなかった」と声を詰まらせた。

 下関国際の方ケ部諒久投手(同)と南陽工の山本涼之介投手(同)の両エースの投手戦となった。

 140キロを超える直球を連発した方ケ部投手は、ロースコアの展開を覚悟していた。「山本君との投げ合いになる。ピンチの場面を抑えないと、という一心で投げた」

 一回から四回まで得点圏に走者を背負いながらも切り抜け、0―0のまま延長タイブレークに突入した。

 下関国際は無死一、二塁から犠打を試みたが山本投手が判断良く二塁に送球し、併殺を取られた。三塁に走者は残ったが次打者が凡退して無得点に終わった。

 その裏の南陽工の攻撃。犠打を決められ、次打者を敬遠して1死満塁。斉郷竜馬選手に投じた139球目が三塁線を襲う。この日初めての失点で、夏が終わった。

 「十回のあの1球は一番苦しい1球だった。練習試合でもその1球を大切にしてきたけど、自分の練習不足があって最後に打たれた」と方ケ部投手は悔やんだ。

 両校は昨夏の山口大会準決勝で激突した。南陽工が1―4で迎えた九回に4連打などで1点差に詰め寄り、下関国際が辛くも逃げ切るという熱戦だった。

 松谷主将は「(南陽工の)バッテリーは去年から残っていて去年の悔しい思いがある。自分たちは今までやってきたものができなくて。3年の力で負けた」と話した。

 下関国際の昨夏のチームの主力は全員3年生だった。「新チームを作るのが日本一遅かった」と坂原秀尚監督は振り返る。「今年の3年生には練習以上にミーティングを重ねてきたが時間が足りなかった。しかし、メンバー総替えの中でよくやってくれた」と選手をねぎらった。

 一方の南陽工はタイブレークで勝負を分ける「攻撃的な守備」を見せた。

 十回表無死一、二塁、下関国際の先頭打者、渡辺真希斗選手(1年)がバントすると、山本涼之介投手(3年)は迷わず二塁に送球。カバーに入った遊撃手斉郷竜馬選手(同)が一塁に転送して併殺に切って取った。

 この場面のバント処理は、三塁に投げてまず1死を確実に奪うのがセオリー。併殺が取れずに1死で一、三塁にランナーを残す可能性があり、リスクを伴う大胆なプレーだった。

 斉郷選手は「瞬時の判断。山本だったら(併殺を狙って二塁に投げてくることが)あるだろうと思いながらカバーに入った。自分たちで考えて作り出すのが南陽工の野球」と胸を張った。

 山崎康浩監督は「送られたと思い、2点を覚悟した。山本が脱兎(だっと)のごとく出てきてセカンドに投げるなんて、よもやのプレーでびっくりした」と振り返る。

 練習はしていたが、山崎監督から指示は出していなかった。「僕には全く頭になかった。選手らが勝負をかけてやったこと。本当にすごい。大会に入って成長を感じる」と感心しきりだった。(山野拓郎、松下秀雄

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