タイブレーク制した仙台育英 「完全アウェー」でも冷静さ貫いて勝利

安藤嘉浩
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(21日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 仙台育英2―1神奈川・慶応)

 「陸の王者、慶応~」。そう歌う応援歌「若き血」の大合唱が、甲子園に何度も響き渡った。

 「しびれました」と仙台育英の4番斎藤陽(ひなた)は笑う。「優勝した去年の夏も5試合したけど、ここまでの応援は経験していない。ダントツでした」

 その大応援団の声援を背に、慶応は果敢に立ち向かった。先発の右腕、小宅(おやけ)雅己はシュート気味に変化する球を駆使し、1点しか許さない。「うちが勝つなら、ロースコアの展開しかない」と森林貴彦監督が踏んでいた流れに持ち込み、土壇場の九回に追いついた。

 「素振りしているときは緊張したけど、ちゃんと整理して打席に入れた」。代打で同点打を放った安達英輝が胸を張る。「初球から振る。直球を待つ中で、変化球に対応しよう」。狙い通り、1球目のスライダーを左前に運んだ。

 ただ、仙台育英は追いつかれてもリードを許さなかった。延長タイブレーク制に入った十回表の守りも、用意周到だ。慶応が送りバントで1死二、三塁をつくってきても、内外野とも前進守備は敷かない。「裏の攻撃があるので1点はいい」と主将で遊撃手の山田脩也。「何度も練習してきたから冷静に対応できた」

 この回を無失点でしのぐと、その裏、1死満塁から熊谷禅の打球が左翼手の前で弾んだ。サヨナラ打と思った次の瞬間、左翼手の好返球で三塁走者が本塁でアウトにされてしまった。絶体絶命のピンチを救った奇跡的なバックホームに、慶応の大応援団が地鳴りのような歓声をあげる。

 「完全なアウェーでしたね」。次打者の山田は苦笑する。「でも、仕方ないとすぐに切り替えた。相手の大応援? 自分たちが応援されていると考えた。思ったより楽しかったです」

 2死満塁。初球を左前にはじき返し、しのぎ合いに終止符を打った。

 「勝因は夏の経験。様々なところで生きた」と仙台育英の須江航監督は言う。相手の大応援も味方に変え、最後まで冷静に自分たちのプレーに徹した選手たち。「夏の王者」は、したたかだった。(安藤嘉浩)

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