役を突き詰め、知らない自分と出会う 俳優活動25周年の吉田羊

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編集委員・藤谷浩二
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 演じることにひたむきに向き合い、役を徹底的に掘り下げる。そんな吉田羊の舞台から伝わってくるのは、一期一会の人生を生きる人間の力強い生命力と真実味だ。この夏、18世紀の英国の田舎町を舞台にした翻訳劇「ザ・ウェルキン」に主演し、新たな世界の扉を開ける。

18世紀英国の助産師を演じる

 ハレー彗星(すいせい)がやって来ると予見された1759年。殺人罪で絞首刑を言い渡された少女サリー(大原櫻子)が刑を免れる妊娠を主張し、12人の女性が陪審員として集められる。男性中心の封建的な社会で、様々な境遇や思惑の女性たちが激しく主張をぶつけ合い、妊娠の有無を問う。吉田が演じる助産師エリザベス(リジー)は、サリーを救おうと議論の中心となる存在だ。

 「最初は暗く怒りに満ちた作品だと思ったけれど、所々にユーモアがある。作者の俯瞰(ふかん)した視点とドライな世界観が印象的でした」と語り、こう続ける。「社会への怒り。裁きがもたらすもの。母と命の尊厳。多くの複雑なテーマのどれをリジーが請け負ったら、この話の芯が見えてくるだろうかと考えました」

 さらに、当初は正義の人のイメージだったリジーの人物像も、稽古を重ねるにつれて変わっていった。

小劇場から出発し、俳優生活25周年を迎えた吉田羊さん。人柄の表れる取材の際の様子を、記事の後半でお伝えします。

稽古場で発見を重ねて

 演出を手がける28歳の若手…

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