聖地に根付く異国の味 1月のクリスマス、深い縁をたどった

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エルサレム=清宮涼
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 ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地があるエルサレム旧市街には、それぞれの信徒の地区の他に、もう一つの地区がある。アルメニア人地区だ。

 旧市街を訪れて、「なぜアルメニア人地区が?」と思う観光客もいるかもしれない。

 4世紀初め、世界で初めてキリスト教を国教としたアルメニアと、聖地エルサレムとの縁は実は深い。エルサレムには4世紀ごろから、アルメニア人が暮らしてきた。

 1月上旬、旧市街のアルメニア人地区を歩いた。人通りの多い他の地区に比べて静かで、教会には大きなクリスマスツリーが飾られていた。エルサレムのアルメニア系住民は、ユリウス暦に基づき1月にクリスマスを祝うためだ。

 クリスマスのための料理の準備をするという、ホピッグ・ジョーダンさん(63)を訪ねた。

 「1年に1回、特別なクリスマスのときに食べる、伝統的な食べ物です」

 エルサレムのレストランなどで働いてきた料理人であるホピッグさんは語る。

 第1次世界大戦中の1915年にはオスマン帝国でアルメニア人虐殺事件が起き、多くのアルメニア人がパレスチナに移り住んだ。48年にイスラエルが建国されると、パレスチナ系住民と同じく土地を追われ、ヨルダンなどに逃れた人たちもいた。

 「トピッグ」と呼ばれる料理には、中東の料理でおなじみのヒヨコ豆や、タマネギを使う。戦乱などで困難な時代にも手軽に手に入る食材を用い、年に一度のクリスマスを祝う食卓に上ってきたのだという。

 2日間水につけ、皮をむいたヒヨコ豆を、ミキサーでつぶす。塩やクミン、黒こしょうを加えて混ぜ合わせ、生地をつくる。なかなか時間と手間のかかる作業だ。

 次は、具となるソース作り。ここで、ゴマのペーストに酸味や香辛料を加えた「タヒーナ」が出てきた。とろっとしていて、中東ではサラダやパンとともに食べられる、食卓に欠かせない食材だ。

 タヒーナがアルメニア料理に…

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