浅田真央さん、森高千里さんらのヘアメイク担当が語る「本来の仕事」

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浅野有美
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 「技術はできて当たり前。気配りや心遣い、こまやかな神経が必要なの」

 7月半ば、ヘアメイクアップアーティスト・髙橋貢さんの仕事現場に立ち会った。

 この日、担当したのは元フィギュアスケート選手の高橋成美さん(29)のヘアメイク。成美さんの印象が、みるみるうちに変わっていく。まさに「貢マジック」だ。

 室内は暑くないか、のどは渇いていないか。ヘアメイクや撮影中は成美さんが気持ちよく時間を過ごせるように気を配る。声をかけながら優しい笑顔やシャープな表情を引き出す。

 浅田美代子さん、石田ひかりさん、石黒賢さん、森高千里さん、錦織圭さん、国枝慎吾さん、浅田真央さん、上地結衣さん……。数多くの俳優やアスリートから指名を受けてきたヘアメイクアップアーティスト。CMや広告、雑誌、企業のメイクレッスンなどに加え、初の著書、奇跡の60代が叶(かな)う「大人の上品ツヤ肌メイク」(光文社)も出版し、ますます活動の幅を広げている。

 京都出身。祖母の代から続く美容室で、両親も叔母も美容師という家庭に育った。京都美容専門学校卒業後、約6年美容室で働き、フランス・パリに短期留学した。

 20代前半、大きな決断をする。

 「女性誌でカワイイと思うヘアメイク写真のクレジットにいつも同じ人の名前がありました。この人のアシスタントに付くしかないと思ったんです」

 それが後の師匠となる新井克英さんだった。

 新井さんの事務所に履歴書を送り、上京。1年ほど待ち続け、ついに連絡がきた。

 電話で、面接の代わりにアシスタントを務めるように言われた。東京・青山の骨董(こっとう)通りにある店「ハンティング・ワールド」の前で待ち合わせた。

 向かった先は女性誌のタイアップ企画の撮影現場。モデルも撮影者もスタイリストも超一流。ヘアメイク担当が新井さんだった。

 「これだと思いました。事務所のマネジャーから給料について言われましたが、もうお金じゃないと。翌日事務所が開く前から待機して、電話で(アシスタントに付くことを)お願いしました」

 その時、マネジャーから言われた言葉は忘れもしない。

 「ヘアメイクアーティストになりたいなら感性豊かで神経が細やかでよく気が利いて当たり前。それができなかったらとっとと京都に帰りなさい」

 覚悟を決めた。

 1年余りアシスタントを務め、アーティスト・今井美樹さんの初の全国コンサートの仕事を機にフリーランスになった。仕事を重ねる度にアシスタント時代の経験が生かされた。

 思い出すことがある。新井さんは踊ったり、鼻歌を歌ったり、モデルや俳優のモチベーションを上げる雰囲気づくりをしていた。経験の浅い髙橋さんにも意見を求めてくれた。

 「マネジャーから『ヘアメイクはしょせんピエロなのよ、されどピエロよ』と言われました。初めはわからなかったのですが、フリーになって何十年もたってわかってきました。どんなに相手がナーバスな状態でも、ヘアメイクの1時間、1時間半の間、精神的にもケアしつつ、ヘアメイクを終えた後、あーきれいになった、私は日本一の女優よ、モデルよ、と思わせて、カメラの前、舞台の上に出させる。それがヘアメイクの本来の仕事なのだと感じました」

 冷房が寒かったらストールを…

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