沖縄戦最後の知事を追った「生きろ」 大阪で公開へ

神田誠司
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 76年前の沖縄戦当時、県民の命を守ろうと奔走した島田叡(あきら)・元沖縄県知事の生涯を追うドキュメンタリー「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」が27日から、大阪市淀川区の第七芸術劇場で公開される。

 ニュース番組のキャスターを長く務めたTBSの佐古忠彦監督が、島田氏に興味を持ったのは2013年だ。番組の取材で、沖縄戦最後の地である摩文仁(まぶに)の丘にある慰霊塔・島守の塔に島田氏の名前が刻まれていることを知った。

 島田氏は神戸市生まれの内務官僚で、沖縄戦直前の1945年1月に知事になった。それがなぜ慰霊の対象にされているのか。

 どんな人物だったのか調べるうち、行政トップの地位にありながら、玉砕を美徳とする軍にただ従うのではなく、周囲に「生きろ」と言い続けた人物像が浮かび、映画化を企画した。

 映画では、決死の覚悟で沖縄へ赴任した島田氏の生い立ちから、米軍に押され、県民の死もいとわぬ戦いに傾いていく軍にあらがおうとした足跡をたどる。地上戦を生き抜いた住民や軍、県の関係者、遺族らの証言や資料が紹介される。

 島田氏に対して沖縄では、軍と協力し、戦争を遂行した責任を問う声もある。佐古さんは「美化するのでなく、功罪や板挟みになった苦悩を描くことで、声を上げにくい時代や組織の中でのリーダーのありよう、個としてどうあるべきかを考えてもらいたかった」と話す。

 第七芸術劇場では27日午後4時半と28日午後0時15分からの上映後、佐古さんのあいさつがある。(神田誠司)

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