辺野古訴訟、国が勝訴 知事の承認取り消し、高裁認めず

岡田玄 吉田拓史
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 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、埋め立ての承認を取り消した沖縄県の翁長(おなが)雄志(たけし)知事を国が訴えた訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)は16日、国の主張を認め、翁長知事が承認取り消しの撤回に応じないのは違法だとする判決を言い渡した。「普天間の危険を除去するには埋め立てを行うしかなく、これにより基地負担が軽減される」との判断を示した。

 辺野古をめぐる国と県の一連の争いで、司法判断が示されたのは初めて。翁長知事は最高裁に上告する方針で、埋め立て工事は引き続き再開できない見通し。

 判決は、知事による埋め立て承認の審査権限について、国の計画が不合理でなければ、知事は尊重すべきだとした。

 そのうえで、「海兵隊の航空部隊を地上部隊から切り離して県外に移転することはできない」などとした国の主張をほぼ全面的に採用。「普天間飛行場の被害を除去するには新施設(辺野古の代替施設)を建設する以外にはない」などと指摘し、2013年12月に仲井真弘多(ひろかず)前知事が埋め立てを承認したことは「不合理とは言えない」とした。

 一方、翁長知事が埋め立て承認を取り消したことについては「日米間の信頼関係の破壊」といったデメリットを挙げ、「移転は沖縄県の基地負担軽減に資するもので、民意に反するとは言えない」とし、取り消すことによる利益が不利益を大きく上回っていないなどとして「違法だ」と指摘。翁長知事が国の是正指示に従わない不作為について違法と認定した。

 判決を受け、菅義偉官房長官は16日午後の会見で「国の主張が認められたことは歓迎したい」と述べた。一方、翁長知事は会見で「地方自治制度を軽視し、沖縄県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断だ。裁判所には法の番人としての役割を期待していたが、政府の追認機関であることが明らかになり、大変失望した」と述べた。(岡田玄、吉田拓史)

判決の骨子

 ◆普天間飛行場の被害を除去するには(辺野古の)埋め立てを行うしかない。それにより県全体として基地負担が軽減される

 ◆埋め立て事業の必要性は極めて高く、それにともなう環境悪化などの不利益を考慮しても、前知事が埋め立てを承認したことは不合理とは言えない

 ◆埋め立て承認に裁量権の逸脱・乱用はなく、違法とは言えないので、現知事の取り消し処分は違法だ

 ◆知事は、国の是正指示が出て相当期間が経過しているのに従っておらず、これは不作為で違法に当たる

     ◇

 〈辺野古への移設計画をめぐる裁判の経緯〉 前知事による埋め立て承認を翁長知事が昨年10月に取り消したため、国が昨年11月、沖縄県を相手取って代執行訴訟を提起。県も提訴したが、今年3月、全ての訴訟を取り下げる和解が成立した。和解に基づき、国は、承認取り消しの撤回を求める是正指示を出したが、翁長知事は応じずに国地方係争処理委員会に審査を申し出た。しかし、係争委は是正指示の適否を判断しなかった。国は7月、翁長知事が国の指示に従わないのは違法だと確認を求める今回の訴訟を起こした。

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