(関西食百景)冬を潤す おこたの友

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文・小川詩織 写真・遠藤真梨
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異色の定番 福井の水ようかん

 「冬はこたつで水ようかんでしょ!」。福井県の人たちは口をそろえる。家族のだんらんの場などで、渇いたのどを水ようかんでつるりと潤すのだ。つややかな小豆色は、ぷるるんとゼリーのよう。

 こたつの準備が始まる11月初旬から、県内の和菓子屋では水ようかん作りに追われている。福井市中心部にある「えがわ」では、午前6時前から店舗2階の工場に明かりがともる。

 大釜に寒天と水を入れ、火を入れる。煮立つと、こぶし大の黒砂糖の塊、薄桃色の小豆あん4袋、ザラメ糖3袋を一気に流し込む。立ちのぼる湯気は、ふわっと甘く、どこか懐かしい香りを含む。「黒砂糖ですね。福井の水ようかんは黒砂糖のなかでも一番上等のものを使います」。社長の江川正典さん(74)が教えてくれた。

 大釜から直径1メートルほどのたらいに移し替え、扇風機に当てながらかき混ぜる。別のたらいに移して混ぜ、少しずつ人肌程度にまで冷ます。そして、箱に1・5センチほどの厚さで流し込み、室温で冷まして14等分に切れ目を入れる。「一枚流し」と呼ばれる独特の技法だ。

 缶入りのものなどを、夏に冷やして食べるイメージがある水ようかん。季語も夏を示す。

 なぜ、福井では冬の定番なのだろう?

丁稚の甘み 煮詰めてあっさり

 水ようかんを作る大釜は、二重になっている。釜の隙間を蒸気が巡り、やわらかく熱が回るという。寒天、黒砂糖、小豆あん、ザラメ糖、そして水……。1時間ほどかけて丁寧に混ぜ合わせる。「こまめにかき混ぜないと寒天とあんが分離するからね」。福井市中心部の「えがわ」の江川正典社長は言う。

 なぜ、水ようかんは福井では冬の定番なのか?

 福井県内でシェア7割を誇る…

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