(いま伝えたい)原発で山も人生も変わってしまった
「千人の声」2014
福島県いわき市の仮設住宅に暮らす小林信一さん(68)の日課は、午前と午後の散歩だ。1、2時間ずつ、毎日経路を変えて足腰を鍛えている。川内村の自宅に帰ったらまた農業や山仕事に復帰できるように。でもまだ、帰村には踏み切れないでいる。
村は2012年に「帰村宣言」を出し、除染が進む。小林さんの自宅も、土を入れ替えるなどして昨年末には除染を終えた。
だが、小林さん宅は東京電力福島第一原発から20キロ圏内の「避難指示解除準備区域」にあり、一時帰宅はできても夜は泊まれない。自宅周りの山林の除染はまったく手つかずだ。
「針葉樹の葉や木の隙間にくっついた放射性物質は取れない。帰っても山に入れないなら、以前の生活に戻ったとはいえない」
退職後は農業をしながら山林を手入れし、山菜やキノコを採り、釣りやイノシシ狩りをする。そんな夢が、原発事故で取り上げられてしまった。「人生まるっきり変わりました。これから何をして過ごしたらいいのか、考えが浮かばない」
大震災と原発事故は、ふるさとの姿を一変させた。いまも、住み慣れた家に帰れぬ人たちが大勢いる。
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