悲劇繰り返す韓国の「帝王型大統領制」 保守重鎮が呼びかける大改革
戒厳令を出し、国会にすぐ撤回させられた大統領はいま、弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)されるかどうかの瀬戸際に立っています。混乱の極みにある韓国政治は、どんな状況にあるのか。何が尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に大きな過ちをおかさせたのか。長く国会議員生活を送った保守の重鎮、金炯旿(キムヒョンオ)・元国会議長に問題の本質について尋ねてみました。
韓国人の自負心傷つけた戒厳令
――戒厳令は韓国にどんな影響を与えたと思いますか。
「韓国は北朝鮮と戦った朝鮮戦争で国土が荒れ果て、世界の最貧国の一つでした。1953年の休戦後、その国をまさに血と汗と涙で立て直し、援助を受ける側から与える側となったのです」
「短期間に産業化、民主化、そして情報化を成し遂げたことへの自負が私たち韓国人にはあります。その思いが、戒厳令という愚かな判断で大きく傷つきました。対外的にも、これまで積み上げてきた韓国の信認度はガタ落ちしたことでしょう」
――尹氏は就任当時から「自由」「民主主義」という言葉を繰り返し強調していました。そんな人が……。
「彼は非常戒厳の理由を、自由民主主義を守るためだと言いました。しかし、たとえそれが目的であったとしても、手段と手続きが自由民主主義の枠を超えては絶対にいけない。皮肉にも尹大統領は、戒厳令を出したことで自ら韓国の自由民主主義を大きく後退させたのです」
――やはりそれほどまでに追い詰められていたということですか。
「国会で過半数の議席を優に…