地上波出ずとも苦しさは「1ミリもない」 稲垣吾郎さん 7年に思い

地図を広げて

聞き手・松沢奈々子

 先月、「with MUSIC」という音楽番組に香取君、草彅君と3人で出ました。7年前に「新しい地図」が始まってから地上波で歌うのは初めてだったせいか、反響が大きくて驚きました。テレビの影響力を改めて感じましたね。

たくさんあった楽曲 いまは「ひとつの曲をじっくり、長く」

 歌った後のトークで「緊張した」と話したのですが、本心です。普段は出ないアドレナリンが出て、どきどきして興奮する感じも思い出した。2人と一緒だったから、初心に戻ったというか。3人で出たことの意味は大きかった。

 テレビって異世界というか夢の世界。あっという間に解ける魔法みたいで、「自分は今、魔法にかかってるんだ」と信じ込まないと、とてもじゃないけどステージに立ってられない。もともと人から見られるのが苦手なんだけど、その感覚を久々に実感しましたね。

 歌ったのはソロの新曲と、「雨あがりのステップ」という、2018年に3人で発表したパラスポーツの応援ソング。「雨あがり~」は、東京とパリでパラリンピックが開かれた時、イベントや自分たちの番組で披露してきました。昔は曲がたくさんあったから、ひとつの曲だけ歌い続けることはなかったんだけど、この曲はじっくりと長く歌っています(笑)。曲というのは聞く人の中で完成形を迎えて、そしてまた成長していくものだと思ってるから、4年後のロサンゼルス大会にもつなげられたら、と楽しみにしています。

地上波出演減っても苦しかった思いは「1ミリもない」

 この7年で、環境はだいぶ変わりました。子どものころからずっと同じ会社やシステムの中にいたわけだから、「地図」を始めた時は当然怖かった。未知の扉を開けるように、右も左もどうなるかまったくわからない。いろんな都合でテレビに出る機会が減ったことを心配してくれる声があったのも知っているし、ありがたく受け止めていますが、僕は悲観的にはならなかった。

 そこに対する思いは、3人それぞれ、少しずつ温度差はあるかもしれませんが、「地上波に出られなくて苦しかった」という思いは僕は1ミリもない。ネットでの番組やラジオ、舞台と、その時々に100%を尽くしてきたから。

 今思えばそういう運命で、自然の流れ。これまでのことがなければ、今の幸せはないんだよね。同じ環境で続けることがベストだと思いがちだけど、人生ってそうはいかないじゃないですか。いつまでも同じ場所にいることがいいと僕は思いたくなくて、その時代ごとにできることを見つけたい。

 今後、僕の番組のゲストに「両親がSMAPファンです」という若いアーティストが来たら話のきっかけにできるし、若い世代に伝えられることがあるはず。世代交代なんて大げさなことじゃなくて、そういう「つなげていく」ことを大事にしたいと思っていますね。(聞き手・松沢奈々子)

 ◆稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんによるリレー連載です。次回は11月10日の予定です。これまでの連載は朝日新聞デジタル(http://t.asahi.com/q208別ウインドウで開きます)で読むことができます。

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