人事考課が働く人を追いつめる 会社に好都合な「強制された自発性」

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聞き手・田中聡子

 会社勤めの人について回る人事考課。自分への評価に一喜一憂する人もいるかもしれません。労働研究者の熊沢誠さんは、日本企業は人事考課で労働者を追い詰めていると問題視します。労働者が奪われてきたものとは――。

仕事ではなく「人」の評価

 人はどんな場でも他人より低く評価されると落ち込むものですが、会社の人事考課や査定は社員の生活の明暗を大きく左右するだけに、そのインパクトは欧米よりもはるかに深刻です。

 欧米では査定の対象はエリート層に限られ、普通の労働者に個人査定はありませんが、日本企業の人事考課は社員の全階層に適用されます。もっと重要な日本の特徴は、評価項目の多面性です。職務の実績だけでなく潜在能力も評価され、「やる気があるか」など働く態度まで評価の眼目になります。「仕事の評価」というより「人の評価」ですね。だから低い査定は従業員には全人格的に低いランクの評価をされたと感じられ、打ちのめされるでしょう。

 そうなるのは、日本企業が「…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年3月18日12時25分 投稿
    【視点】

    「ジョブ型」という言葉は、言葉だけは日本の中でも一定程度使われるようになってきたが、その内容についての理解はいまだ非常に歪んでいると感じることがたびたびある。先日も、企業の方が、「ジョブ型」を「成果主義」と同義のように捉えて発言している場に

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年3月18日16時28分 投稿
    【視点】

    熊沢誠先生の議論は、人事考課のバイアスに触れる指摘としても興味深い。 評価が評価者(の評価軸)のバイアスに左右されたり、数字に表しやすい評価を気づかぬうちに重視し過ぎていたり。人事考課の力について考える上で、人事評価のそもそもの限界に

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