津波直撃、家を失う 3・11「その時そして」12年後の奇跡(3)
杉村和将
順調に棋力を伸ばしていた小山怜央四段(30)の暮らしは、岩手県立釜石高校2年生のときに起きた東日本大震災で一変した。
海から7キロほど離れた高校にいた小山四段は無事だった。
弟の真央さん(25)は、釜石市の鵜住居地区にある釜石東中学校の1年生だった。学校は津波で水没したが、高台に避難して生徒は全員無事だった。
小学校の児童たちと率先して避難した同中の生徒たちの行動は、後に「釜石の奇跡」と呼ばれた。
父の敏昭さん(61)は大槌町のショッピングセンター「マスト」の防災責任者だった。客や従業員の避難誘導にあたり、自らも高台に逃れて無事だった。
家族の中で、もっとも過酷な体験をしたのは、母の聖子さん(61)だった。
自宅ごと1キロ流された母
聖子さんは海にほど近い鵜住…