「増税メガネ」ルッキズム厳禁時代になぜ拡散? 眼鏡ライターの懸念

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加藤勇介

 ルッキズム(外見至上主義)に厳しい視線が注がれる時代の中で、なぜ岸田文雄首相を揶揄(やゆ)する「増税メガネ」という呼び方は広がったのか。眼鏡ライター、言語学者、ネットスラングに詳しい評論家に聞いた。

眼鏡ライター・伊藤美玲さん

 岸田首相がよくかけている眼鏡はデンマーク製の「リンドバーグ」。5万円超の高価格帯ですが、ネジを使わないオリジナル構造で、ミニマルで美しいデザインが高く評価されている眼鏡です。

 眼鏡をかけた歴代首相の中でも特にシンプルな眼鏡といえ、外務大臣だった2015年には日本メガネベストドレッサー賞の政界部門を受賞されています。それだけに、眼鏡がこういう形で注目されたのは何ともいえない思いです。岸田首相があまり個性が強くない方なので、結果的にシンプルでも眼鏡が印象に残ったのでしょうか。

 「増税メガネ」が広まってしまった理由として、眼鏡に対する印象がこの十数年で大きく変わったことで、逆に悪意なく多くの人が使ってしまったのではないかと考えています。もしこれが眼鏡というアイテムではなく身体的特徴を揶揄するような言葉だったら、ためらう人が多くてここまで広がらなかったでしょう。

 私は小学生の時から眼鏡をかけていますが、親からは「写真を撮る時は眼鏡を外しなさい」と言われた世代です。昔は欧米の風刺画で、日本人を皮肉る表現として眼鏡に出っ歯にカメラを持った姿がステレオタイプでした。日本のドラマやアニメでも、眼鏡のキャラクターはガリ勉や陰気といった描かれ方をよくされました。

 記事後半では、眼鏡への印象が劇的に変化した動向、その一方でまだ残る社会と眼鏡の問題について伊藤さんが解説します。また、評論家の藤田直哉さんは従来のネットスラングとは大きく異なる拡散の理由を、日本語学者の山口仲美さんは「増税メガネ」はあだ名の完成度は高くないとしつつ使いやすい理由を分析します

 そんな眼鏡が変化したのは…

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