大規模国立大に「運営方針会議」設置の不可解 問題先送りの改正法案

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社会学者・西田亮介=寄稿

Re:Ron連載「西田亮介のN次元考」第5回

 国立大学法人法の改正案が開会中の臨時国会で審議中だ。大学教員などには「学問の死」「大学自治の危機」を招くといった強い批判があり、ハッシュタグを使った反対キャンペーンも行われている。改正案で設置される「運営方針会議」の人選に文部科学大臣の承認が必要なため、政府の影響力が強まるという懸念もある。日本学術会議の任命拒否問題が念頭にあるのだろう。

 今回の改正は、高等教育行政に広く影響を及ぼす内容である。普段、関心の対象になりにくい国立大学法人法が注目され、批判の声が上がるのは理解できるし好ましい。

 中身としては、「国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るため」という味も素っ気もない一文のもと、一部の大規模国立大学法人を中心に大きな権限をもった「運営方針会議」の設置を求めることを軸に、保有資産の弾力運用を可能とすること、東京医科歯科大学と東京工業大学を統合することなどを含んでいる(大学統合は大学間の合意を法的にオーソライズするにとどまり、あまり論点はない)。

 確かに、注目するべきは「運営方針会議」なのだ。少していねいに見ていけば、この間の大学改革について賛否のどちらの立場からみても、無駄に無駄を重ねるようなものであるというのが、筆者の理解である。

 改正の詳細については、巷間…

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    天野千尋
    (映画監督・脚本家)
    2023年12月4日11時30分 投稿
    【視点】

    西田さんが書かれているように、今回の「運営方針会議」設置の話は大学関係者にとっても突然降って湧いたような話であり、狙いが掴めず不安が膨らむ中で可決に向かおうとしているようです。 3年前の菅政権の学術会議の会員候補6名の任命拒否の問題も置き去

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    西田亮介
    (社会学者・日本大学危機管理学部教授)
    2023年12月6日9時32分 投稿
    【解説】

    この20年、大学の姿は変わり続けている。その一方で、多くの人は「自分が通っていた当時の大学」の記憶で、大学を論じがち。文科省が主導した教育の質保証の概念が広まり、現在では代返は不正行為、レポートやテスト一発で採点する授業評価は好ましくないと

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