なぜイスラエル擁護に固執する? ドイツの「過去の克服」の落とし穴

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あすを探る 板橋拓己さん

 「イスラエルの安全保障はドイツの国是だ」。10月7日のハマスによる攻撃以来、ショルツ首相をはじめドイツの政治家たちはこの文言を繰り返し、イスラエルを支持してきた。11月17日、トルコのエルドアン大統領との共同記者会見では、「子供たちを殺戮(さつりく)する」イスラエルを非難するエルドアンに対し、ショルツはイスラエルの自衛権を強調し、同国との連帯を再確認した。

6人の論壇委員が交代で執筆するコラム「あすを探る」。今月の筆者は、東京大学教授の板橋拓己さん(国際政治史)です。

 この頑(かたく)なとも言えるイスラエル擁護は、ナチによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)という負の歴史を抱えているからだとしばしば説明される。それはそうなのだが、実のところ、ドイツの公的言説でこれほどまでにイスラエル批判が難しくなったのは、そう古いことではない。

 ここで注目すべきは、198…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2023年11月30日8時53分 投稿
    【視点】

    絶対的不可侵のタブー領域を作ってしまうことは、なにごとにおいても不健全だと改めて思わされる。第二次大戦後、ユダヤ人虐殺に対してドイツは加害者だったことを反省した。そこまでは良い。だがそれが、イスラエルは何をしても許されると甘やかし続け、今の

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2023年11月30日11時46分 投稿
    【視点】

    記事が言及するショルツ首相との共同会見でのエルドアン大統領の発言には続きがあった。「10分に1人ガザの子どもが殺されている。これは戦争犯罪として国際法廷で裁かれるべきことではないか?」。イスラエルの「自衛権」を繰り返すばかりだったショルツ首

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