「美術館なくすな」ファンの声で再開 地方の文化施設、物価高が直撃

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遠藤和希

 家計や商店の経営を圧迫する光熱費高騰や相次ぐ商品の値上げ。そんな物価高の影響で、台所事情が苦しいのは地方都市の美術館や博物館も同じ。全国有数の施設数を誇る長野県内では、コロナ禍による入館数減少の影響を引きずり、中には運営者の高齢化による後継者難に悩む施設もある。岐路に立つ文化施設の実情を探った。

コロナ禍で収入減、節約でしのぐ

 長野市の川中島古戦場史跡公園に立つ市立博物館は1981年の開館。プラネタリウムも備える同館の入館者は例年3万人を超える。

 長野盆地の歴史や風土を紹介する博物館の収蔵品は約10万点。昨春には川中島の戦いについての常設展示室もつくった。2022年度の博物館の歳出は分館も含めて約2億2200万円だった。運営費の多くは市の予算からまかなうが、23年度の場合、2千万円近くは入館料収入をあてる。

 ただ、コロナ禍がその収入を直撃した。コロナ禍で入館者数は半減、今も回復しきっていない。さらに、エネルギー価格の高騰が重なり、昨年度の電気代は当初予算から約3割増に。

 電気代は市の予算の増額でまかなったものの、収入減は施設や展示への関心を高めてもらうための資料作成費などを節約してしのぐ。学芸員の成田健館長補佐は「学校や団体客は戻ってきたが、紙代も上がり負担は増している。節電や冊子の発行部数を減らすなどして何とか予算内でやりくりしている」。

 県内の博物館や美術館を会員とする長野県博物館協議会の笹本正治会長は「コロナで減った客を呼び戻すためにも魅力ある作品を充実させる必要がある。だが運営費を切り詰めるなかでそれも難しく、県内の博物館では美術品や資料の維持管理も大変になっている」と明かす。

 東京の国立科学博物館も8月、光熱費や資材の高騰で、標本の収集保管などにあてる費用が危機的な状況にあると訴え、クラウドファンディング(CF)で寄付を募りはじめた。

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 私設の施設への影響はより大…

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この記事を書いた人
遠藤和希
長野総局
専門・関心分野
空き家、循環社会、鉄道の将来、通貨危機など