「配慮と特別扱いは紙一重」 小児がん後も続く人生、22歳のため息

有料記事患者を生きる

松本千聖
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 「またか」

 東京都内の大学3年生、浦尻一乃さん(22)は、ため息をついた。

 臨床検査技師を目指し、医療系の学部で学んでいる。この秋から3カ月半にわたる病院実習が始まるが、80人いる同級生の中で、自分だけ受け入れ先の調整に時間がかかった。

 「治療を乗り越えたら、もうつらいことはないだろうと思っていたのに」

 5歳の時に小児がんの「神経芽腫」と診断された。副腎に腫瘍(しゅよう)が見つかり、抗がん剤治療や手術、その後の再発も乗り越えてきた。

 だが治療の影響による合併症で、腸に障害が残った。排泄(はいせつ)をコントロールするのが難しく、授業中も1時間に最低1回はトイレに行く。

 大学が実習先の病院に事情を伝えると「前例がないのでどこまで配慮できるかわからない」といわれた。

 受け入れてもらえることにはなったが、こういう経験は初めてではない。

 中高校時代の移動教室、大学受験、バイトの面接……。人生の様々なタイミングで、いつも困難に襲われた。

 どうしてこんなに生きづらいんだろう。

 思わず、SNSに書き込んだ。

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 思いがけず、いくつもの「い…

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    岡崎明子
    (朝日新聞デジタル企画報道部編集長)
    2023年9月24日10時0分 投稿
    【解説】

    9月は小児がん啓発月間です。「ゴールドリボン」をシンボルマークに、病気への理解や支援を訴える啓発活動が、あちこちで行われています。 日本人の2人に1人はがんになりますが、小児がんの患者数は年2000人程度と「希少がん」の一つです。そのため専

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