「ハンチバック」を風化させるな 読書バリアフリーの担い手の思い

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田中ゑれ奈

 難病当事者である市川沙央さんの小説「ハンチバック」の芥川賞受賞を機に、「読書バリアフリー」への関心が高まっている。読書バリアフリーをテーマに本づくりに取り組んできた成松一郎さんは「今の反響が一過性で終わらないでほしい」と訴える。

 成松さんが代表を務める小出版社「読書工房」は2004年の設立以来、読書バリアフリーに関する書籍の発行・発売のほか、出版社や電子書籍メーカーなどをつなぐコンサルティングを担ってきた。今年7月には、同社が編著を手がけた書籍「読書バリアフリー 見つけよう!自分にあった読書のカタチ」が国土社から刊行。点字絵本や易しい文章で書かれた本、音声読み上げに対応した電子書籍といった、さまざまなバリアフリー事例を豊富な写真入りで紹介した。

 学生時代の盲学校でのボランティア活動をきっかけに、読書バリアフリーに取り組むようになったという成松さん。かつて勤めていたいくつかの出版社でも読書バリアフリーに関する本を企画したが、「こんなの誰が買うんだ」「うちは福祉の本なんか作る気はない」とことごとく却下された。「会社って結局、売れる本を作れとしか言わない。今でも多くの出版関係者は『自分たちの問題じゃない』と思っていると思います」

 それでも、読書バリアフリー…

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この記事を書いた人
田中ゑれ奈
文化部
専門・関心分野
美術、ファッション、ジェンダー