名をはせた歴史と深刻な頭脳流出 ブルガリアが描くAIと国の未来図

有料記事ChatGPT

ソフィア=玉川透
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 ChatGPTチャットGPT)など生成AI(人工知能)の活用は、様々な分野で人手不足の解消につながると期待されている。逆に懸念されるのが、AIに精通した、いわゆる「AI人材」の不足だ。争奪に各国がしのぎをけずる中、東欧のブルガリアに昨年春、AI人材を育成する研究センターが設立された。AI開発などコンピューターサイエンスの分野で世界屈指の拠点をめざす、国の将来をかけたプロジェクトの狙いとは――。

「隠れIT大国」ブルガリア

ブルガリアは、旧共産圏時代に数学や物理学の専門家を数多く輩出しましたが、近年は「頭脳流出」に悩まされてきました。新しい研究センター設立を知り、優秀な学生たちが徐々に戻り始めています。中には、数学の国際コンテストの受賞者も。

 街を見下ろすビトシャ山(標高約2290メートル)の山頂にまだ白い雪が残る今年4月、首都ソフィアを訪れた。緑が広がるのどかな風景の中に、近代的な高層ビル群がひときわ目を引く場所があった。

 ソフィアの「シリコンバレー」と呼ばれるエリアだ。昨年4月、この一画に創設されたのが、AIとコンピューターサイエンスに特化した研究センター「INSAIT」(インサイト)だ。正式名称は、「Institute for Computer Science, Artificial Intelligence and Technology」。その名の通り、コンピューターサイエンスとAIが売り物だ。

 AIシステムの開発には、機械学習やディープラーニング(深層学習)、データサイエンスなどに関する深い知識を持つ技術者、いわゆる「AI人材」が欠かせない。その卵となる優秀な学生らを集めて育成し、彼らが将来、画期的なAIシステムを研究開発する研究拠点をめざす。10年後に30~35人の教授陣、数百人の学生を迎えることを目標に掲げる。

 「チャットGPTを開発したOpenAIのような、トップクラスのスタートアップ人材を輩出する日が必ず来る」

過去には有数の… 今覚えている人はほとんどいない

 プロジェクトを発案したブル…

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