「天下一の廃虚」 役人の実績作り、採算性無視…中国の地方財政悪化
北京=西山明宏
中国の地方政府の財政事情が悪化している。役人が成績を上げようと、採算性を無視した巨大開発を続けてきたことで債務(借金)が膨らみ、自力では「なすすべがない」省まで出てきた。中国経済のリスクになりかねず、習近平(シーチンピン)政権は危機感を強めている。
天下一の廃虚――。
中国南部の貴州省に、こう呼ばれる建物がある。省都・貴陽市から南東へ車で2時間あまり、山深い黔南プイ族ミャオ族自治州の独山県。2020年まで国が指定する貧困地域だった。
ここで建設中だった「天下第一水司楼」が、廃虚のようになった。少数民族の伝統的なデザインで、釘を使わず木をつなぎ合わせた難しい工法。高さ約100メートル、建設総面積は6万平方メートルを超える。18年ごろに外観がほぼ完成したが、その後、工事が止まった。
5月上旬に記者が訪れると、「廃虚」に足場が組まれ、別の建物に改装する工事が進んでいた。周辺に観光客は一人もいない。近くにつくられた店舗用の建物にも「店は一つも入っていない」(地元住民)。
警官が現れ、「写真撮影は禁止だ」と言う。
■無駄遣いの象徴?
理由を聞くと、「債務の問題…