「デフレは働く人を抑圧」 元日銀委員の片岡氏が賃上げを訴えるわけ

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聞き手 シニアエディター・尾沢智史

 日本銀行の新総裁に学者出身の植田和男氏が就いた。金融政策を担う中央銀行のトップ交代は10年ぶりだ。物価が上がり生活が苦しい人もいるなか、難しいかじ取りを迫られる。大規模な金融緩和で「アベノミクス」を支えてきた日銀の対応や今後の課題などについて、PwCコンサルティングチーフエコノミストの片岡剛士氏に聞いた。緩和に積極的な「リフレ派」として知られ、昨年7月まで日銀の審議委員として政策に関わっていた人物だ。

 ――日銀総裁が植田和男氏に代わったことで金融政策は変わるのでしょうか。

 「私自身は日銀が当面、金融政策をドラスティックに変えるとは考えていません。昨年以降、物価上昇率は高まり、全体では3%台前半で推移しています。物価の高まりは、当初、食料品とエネルギー価格の上昇によるところが大きかった。国内の需要が強まって物価が上がったわけではなかったのです。ただし、そうした状況は変わりつつあります」

 「2月の食料品とエネルギーを除いた物価上昇分は2.1%で、黒田東彦前総裁が掲げていた物価上昇率2%を超えました。現在は、2%を達成できるかではなく、この物価上昇率を維持し、持続できるかが焦点です」

 ――欧米などが金融を引き締める方向になっているのだから、日銀も方針を転換すべきだという声もあります。

 「外国がやっているからといって、日本経済の状況を無視しても転換すべきだという議論はいささか乱暴だと思います。それをやってしまうと、アベノミクスで積み重ねてきた緩和の姿勢や、雇用や企業収益の改善が失われてしまう。それを危惧しています」

 かたおか・ごうし 1972年生まれ。シンクタンク研究員を経て、2017年7月から22年7月まで日銀政策委員会審議委員を務めた。

 ――いまは一時的には物価上…

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