母としての「正解」に縛られる私 失敗してもやり直せると信じたい

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立命館大准教授

富永京子のモジモジ系時評

社会学者で立命館大准教授の富永京子さんが、ポップカルチャーや身の回りの出来事から社会と人間についてつづるコラムです。

 前回の連載でも書いたが、子をケアする役割を全うできていないために、自分をきちんとした親だと思えない。だから変わらなくてはいけない。こんなことを考えていたら、ちょうど子育ての「先輩」と対談する機会を得た。サイボウズの青野慶久社長と、毎日新聞の小国綾子記者だ。お二人とも、育児経験を記事や本で積極的に発信されている。

 お二人にお会いしたのは、奇しくも出産からちょうど1年経った日だった。育休を取るのが怖くなかったか、子の存在を公にするにあたり気をつけたことはあるか。対談というより一方的な質問を投げかける形になり、二人から何らかの「正解」を引き出そうと焦る自分に気づく。そんな私の肩の力を緩めたのが「失敗してもいいじゃないですか、失敗したら謝ればいいんですよ。失敗を許さない社会って怖いですよ」という青野さんの言葉だ。

 対談後、小国さんと青野さん、またサイボウズの方々から子の誕生日プレゼントをいただいた。まだ自我すら明確でない1歳児が名指しで祝福されている事実に、私はなにか底知れぬ思いがした。しかし、同席した人物に誕生日を迎える子がいるとわかれば、どういう関係性であれお祝いするだろう。私も迷わずそうする。

 実は、私自身は誕生日を祝わ…

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