第9回子を残して死ねない過剰な「能力社会」 病気で気づいた生産性の意味

 「何分遅れているんですか」

 「主観は聞いていない。ファクトを教えて」

 東京都心の超高層ビル。外資系コンサルタント会社の一室で、勅使川原(てしがわら)真衣さん(40)は、上司からデータで語ることをたたき込まれていた。

 当時28歳。東大大学院を修了後、市場調査会社をへて転職したばかりだった。成果を出そうと焦っていた。

 入社から3カ月後、ストレスで髪の毛が抜け始めた。少しすると今度は顔中に吹き出物ができた。

 鏡の前に立つのが嫌になり、産業医に相談すると「仕事を休んだほうがいい」と言われた。

 それでも「勝ち抜いてこそ発言権を持てると思っていた」

「0.5秒でも早く」

28歳で外資系コンサルタント会社に転職した勅使川原さんは、激しい重圧のなかで努力し、光を見いだしていきます。ところが10年後、予期せぬ事態に見舞われます。

 幼いころから家で「がんばれ…

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この記事を書いた人
渡辺洋介
東京社会部
専門・関心分野
戦争、平和、核問題、東日本大震災
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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2023年1月5日10時21分 投稿
    【視点】

    「自分らしい生き方」とは置かれた環境の中で、「今」の積み重ねによって導かれた「結果」であって、みんなに共通の「正解」や「教科書」はないのだと改めて還暦を迎えて感じているところです。だからこそ「今」にどれだけ自分の最善を尽くせるかが大切なのだ

    …続きを読む
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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2023年1月9日18時25分 投稿
    【解説】

    勅使河原さんのご著書『「能力」の生きづらさをほぐす』は、「個」に意識が向きすぎて、あらゆることが「個」の「能力」のせいにされてしまうことで生じる「生きづらさ」の構造を明らかにしていきます。 苅谷剛彦さんをはじめとする教育社会学の方々のメリ

    …続きを読む

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