第1回大金払ったのに工事中断… 未完成の高層マンションに住む男性の嘆き

有料記事中国不動産バブルの深層

昆明=西山明宏

 中国雲南省の省都・昆明市の中心部から車で40分ほど離れた場所にある住宅街に男性(24)の「家」はあった。

 30階建ての高層マンションの多くの部屋では窓の取り付け工事が終わっておらず、吹きさらしのまま。部屋や廊下には建設用資材が散乱し、電気も水も通っていない。9棟あるマンション群の一角にあるこの廃虚のようなマンションの3階部分、45平方メートルほどの空間に、男性は住んでいた。

 工事が中断し、未完成のマンションに人が住み着いているとの情報を聞きつけ、この目で確かめようと11月、現場を訪ねた。

 男性は自室内の撮影を拒んだが、マンション内部を案内してくれた。棟内でモデルルームにつながっていた水道を使い、ポットでわかして料理や体を洗うのに使う。電気は建設会社が残していった配線を室内に引っ張ってきて、スマートフォンを充電。ガスは業務用のガスボンベを持ち込んだ。

 「当初は50人ぐらいが住んでいた」と男性は打ち明けた。夜になると自宅に帰る人もいたが、ベッドや家具を持ち込み、皆で食事を作り合いながら暮らしていた。だが、風呂も入れない、窓も閉められないことに耐えられず、一人また一人と去った。住民は、この男性ともう一人だけとなった。

 男性はここに住むために賃貸マンションを退去。職場が遠い仕事もやめ、いまは屋台の仕事で食いつなぐ。そこまでして、なぜ住み続けるのか。

中国不動産大手・恒大集団の経営危機が表面化して1年あまり。国内総生産(GDP)の約3割を生み出し、中国経済を牽引してきた不動産市場が冬の時代を迎えています。何が起きているのか。その現場を報告します。

頭金は返してもらえず

 「本当なら自分の部屋になる…

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