不安や分断をあおる情報戦 ウクライナ侵攻の「もう一つの戦場」

メディア空間考 石田博士

  「ロシアが突然、ウクライナ国内のテレビを見られないようにするなんてことが、本当に起きるのでしょうか」。同僚に聞かれたのは、つい1週間ほど前のことだ。

 ウクライナ公共放送の会長が、特派員の取材に対し、「ロシアはクリミア半島を占領した際に、テレビを止めて情報を管理した。再び繰り返させない」と語ったためだ。

 8年前、それは本当に起きた。

 私は2014年、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の武力併合を現地で取材した。

 所属を示さぬままに街や空港を制圧する装甲車両、「自警団」と称する民兵たち、住民の恐怖心をあおるような情報の流布……。クリミアで見た光景は、「現代の戦争とはこうして始まるのだ」「グレーゾーン事態とはこういうものか」と実感させられるものだった。

 特にメディアをめぐる状況は、自国でこれが起きたら、と思うとぞっとするものだった。

 当時の記事や、取材メモをふ…

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