「何のための音楽か」 反田恭平さんの危機感と未来の音楽家への思い
私たちは他者の存在なしにこの世界で存在できるのだろうか。たとえば音楽家にとって他者とは? 向き合うのは常に自分自身か、演奏家仲間か、それとも聴衆か。昨年、ショパン国際ピアノコンクールで51年ぶりの日本人最高位タイの2位に入賞したピアニスト反田恭平さん(27)は、「芸術家は孤独」としつつ、「僕はほかの誰かのために弾く」と語る。既存の枠にとらわれない音楽活動でも知られる反田さんに聞いた。
――2位入賞という素晴らしい結果だったショパン・コンクールですが、出場には周囲の反対もあったそうですね。
「なぜ出る必要があるの?という声は多かったですね。というのも、自分で言うのも恐縮ですが、それまでも『コンサートチケットが取りにくいアーティスト』と言っていただいていたものですから、別にコンクールに出なくても……といった疑問の声でした。実際にリスクは大きい。僕自身も当初、迷いを感じていたのは事実です。自分のコンサートに来て下さっている皆さんに良い結果を報告できなかったら、いままでの応援を裏切ることにならないか、と」
――それでも、なぜ出場を決めたのですか。
「このコンクールは、僕が12歳の小学生だった頃からの憧れでした。当時はサッカー少年でしたが、ワールドカップみたいな世界がクラシックの世界にもあるんだ!と。ただし僕は、コンクールというものと距離を置いてきた人間です。音楽は、陸上競技のタイムやサッカーの得点と違い、客観的に1位と分かるものではなく、新記録のようなものが出る世界でもない。おのれの芸術の価値はおのれで決めたい、という思いがありましたから」
――なのになぜ?
「僕には、音楽の学校を自分…
- 【視点】
反田さんが新しいのは、これまでのアーティスト像を超え、事業家、プロデューサーとして自覚的、戦略的に活動されていることです。その反田さんにとって、ショパンコンクールが「パスポート」や「ツール」というのは頷けます。同じくショパンコンクールで3次
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