障害者とふれ合いイベント コロナでオンラインにシフト

松岡大将
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 障害者とふれ合い、障害を疑似的に体験するイベントが、新型コロナウイルスの影響で規模の縮小に追い込まれている。このうち佐賀県内で主に手がけるNPO法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」(唐津市)は、子ども向けにオンラインで視覚障害者とふれ合う授業に取り組む。授業にはお互いの理解を深める以外に、もう一つの狙いがある。

 3月26日の昼すぎ、東明館中学・高校(基山町)の教室に同館の中高生14人が集まった。全盲の講師2人がいる東京とテレビ会議システムで結び、授業が始まる。

 課題は、身の回りの場所を二つ選び、そこを結ぶ地図を書いて口頭で説明するというもの。ただし、音や匂いなど、視覚以外で情景が伝わるものを三つ入れなければいけない。

 生徒たちは、自宅から最寄り駅や学校など、身近な場所を選んで地図を書き、講師に説明する。「道を曲がるとトンネルがあって音が反響する」「風が強い所を左へ曲がる」。地図を2人に分かってもらおうと説明する。

 最初はぎこちないやりとりだったが、次第に会話が弾んで和やかな雰囲気になった。最後は「時間はどうやって分かるの」「どれぐらい見えないの」といった質問もあった。

 この授業は、支援したいNPOを指定して寄付できる県のふるさと納税制度の寄付金を利用し、同法人が無償で実施した。昨年3月から始まり、全国の学校で30回以上開いたという。広報担当の脇本ひかるさん(31)は「障害者と身近に接する機会が無く、会ってもどうしていいか分からないこともある。ふれ合いで壁がなくなればうれしい」と話す。

 中学2年の井関心太朗君(13)は、「視覚以外の感覚を説明するのが難しかった。障害者と出会ったときは、大きな声で周りの情報を伝えたい」と話した。

    ◇

 このオンライン授業には、障害者の雇用確保という側面もある。もともとNPO法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」と同名の一般社団法人はこれまで共同で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と呼ばれるイベントを開催。障害者らと参加者が暗闇で視覚以外の感覚を使って共同作業を通じてコミュニケーションを楽しむ企画だった。

 両団体は催しに関わる障害者らを50人程度雇っていたが、イベントでは障害者と参加者が手をつなぐなど身体的な接触が避けられず、新型コロナ禍で相次ぎ中止に追い込まれた。協賛する企業からの支援も減って雇用が危ぶまれたためオンライン授業を開き、寄付金を講師の賃金に充てることにしたという。

 脇本さんは「障害者とのふれ合いはもちろん、鍼灸(しんきゅう)やあん摩など、これまで限られた障害者の働き口を広げる狙いがあるので、活動を続けたい」と話す。

 団体は授業先の団体・学校を募っている。問い合わせは電話(03・6231・1640)へ。(松岡大将)

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