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ジミー・ライ氏逮捕の衝撃 中国が最も警戒する男の半生

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広州=奥寺淳

 いま香港で何が起きているのか。なぜ、民主主義の危機なのか――。香港国家安全維持法(国安法)に違反したとして、香港紙「リンゴ日報」創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)が10日に逮捕された。黎氏は11日深夜に保釈されたが、訴追される可能性は残る。香港民主派の太い柱である黎氏への容赦のない弾圧が、民主派の同志や社会に与える動揺は大きい。彼の半生を振り返ると、なぜ中国共産党がこの人物を標的にしたのか、何を恐れているのかが見えてくる。

 黎氏の波乱の人生は毛沢東率いる中国の混乱から逃れたことから始まった。

 黎氏は中華人民共和国成立前年の1948年、広東省広州に生まれた。共産党政権の下、新中国では地主や資本家を敵視する階級闘争が続き、混乱していた。

 香港メディアなどによると、黎家も父親が香港に逃れたり、母親が労働改造所に送られたりという不遇をかこって家族はバラバラになった。そんななか、まだ幼かった黎氏は駅で乗客の荷物を運んでチップやチョコレートをもらって生き延びていたという。

 そして12歳の時、黎氏は貧…

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この記事を書いた人
奥寺淳
編集委員|米中・国際関係担当
専門・関心分野
米中、日中、国際関係