日産赤字、コロナ以外に固有の事情 ゴーン路線のツケ

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稲垣千駿 神沢和敬 専門記者・木村裕明
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 日産自動車の純損失が、従来見通しの「1千億円近く」から6712億円に膨らんだ。赤字の規模は、カルロス・ゴーン前会長が「リバイバルプラン」を掲げて大リストラに踏み切って以来、20年ぶり。コロナ禍の影響はあるが、それだけではない。

 日系自動車大手7社のなかで2020年3月期に純損失を出したのは、日産のほかは連合を組む三菱自動車だけだ。日産の内田誠社長は記者会見で新型コロナウイルスの影響に加え、「日産固有の事情」にも言及せざるを得なかった。

 拡大志向のゴーン前会長が長年率いてきた日産は近年、新興国を中心に生産能力を増強する一方でクルマのモデルチェンジは遅れ、古い車種が増えた。販売台数を追い求めて値引きを重ねた結果、ブランドのイメージも下がってしまった。

 業績の不振は18年3月期には始まり、前会長が18年11月に逮捕された後も歯止めはかからず、むしろ悪化した。

 20年3月期の販売台数は日本で10%減、米国14%減、欧州19%減。主な地域ほとんどで2桁減となり、これまで唯一好調だった中国ですら1%減と下落に転じた。世界販売は10%減の493万台に落ち込んだ。

 手元の現預金や短期有価証券から有利子負債を引いた自動車事業の「ネットキャッシュ」は1兆円強。経営のが健全かどうかの一つの目安とされるが、19年3月末からたった1年で3分の1が吹き飛んだ。(稲垣千駿)

ブランド力どう回復? 詳しい説明なく

 当面の立て直しのカギを握るのが、中期経営計画に盛り込んだリストラ策だ。

 23年度までに69種ある車種を55車種以下に絞る。生産能力は、3交代制を前提にした700万台から2交代制での540万台に減らす、としている。3交代制に戻せば、600万台をつくれる体制という。これらの施策によって固定費を18年度と比べて3千億円減らすという。連合を組む仏ルノー、三菱自動車の力も借りつつ、高コスト体質からの脱却を図るという。

 内田社長は「回収が十分に見込めない余剰資産の整理を実行する」と強い姿勢を見せた。

 ただ、「閉鎖」に具体的に言及した工場はスペインインドネシアだけ。追加の人員削減については、規模も含めて言及を避けた。

 新型コロナの影響が見通せない中で、「前提が大きくぶれる可能性がある中期経営計画なんてまともに聞いてもらえるのか」といぶかる日産関係者もいる。

 そもそも販売低迷に陥ったき…

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