イスラエルとパレスチナの女性団体「架け橋築く」 戦闘後も続く模索
イスラエルとパレスチナの女性たちが連携し、紛争終結を求める声を上げ続けている。昨年10月にパレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が始まって以降、パレスチナとイスラエルの行き来が制限され、ともに平和集会に参加するなどの連携は困難になった。それでも互いに対話を模索し続ける理由とは。
イスラエルの市民団体「ウィメン・ウェイジ・ピース」(WWP)は2014年、イスラエルがガザに地上侵攻し、ハマスとの間で約50日間続いた戦闘後に、イスラエルの女性たちが設立した。「紛争解決に向けて、女性の声が届いていない」と考えたからだ。
紛争地では女性や子どもが被害を受ける可能性が高いと指摘し、平和活動などの分野でジェンダーの視点をとりいれるよう求めた00年の国連安全保障理事会の決議に沿って活動している。
メンバーのナーマ・バラク・ウォルフマンさん(57)は「(イスラエルとパレスチナの)和平交渉に女性が関与することによって、より実行可能で持続的な解決策が生まれると思う」と話す。
■ハマスの攻撃で命を落としたメンバー
WWPは今回の戦闘前からパレスチナの市民団体「ウィメン・オブ・ザ・サン」(WOS)とも連携をしてきた。
「イスラエルとの紛争の中で、多くの子どもや若者が犠牲になっているのに、母親である女性たちの多くは声をあげられない。女性が政治に参加し、もっと自分の意見を表明できるようにしたい」。WOS代表リーム・ハジャーラさん(42)は、22年に団体を設立した時の思いをこう語った。パレスチナでは家庭や政治の世界で男性に決定権があることが多いという。
WOSはヨルダン川西岸ベツレヘムに拠点があり、西岸各地やガザなどから約3千人が参加し、女性の経済的、社会的な自立を支援。長く停滞したままのイスラエルとの和平交渉でも、女性の声を反映させるようパレスチナ自治政府に働きかけてきた。イスラエルから通行許可を得て、WWPとエルサレムなどでともに集会を開き、参加してきた。
昨年10月のガザでの戦闘開始以降、パレスチナ側の死者は4万人を超え、WOSのメンバー37人も命を落とした。ガザの死者の大半は女性や子どもだ。西岸でもイスラエル軍やユダヤ人入植者による暴力が激化し、死者は600人超に上る。WOSはガザや西岸で女性や子どもへの心理的ケアを緊急で行っている。
一方、WWPもガザの戦闘の発端となった昨年10月のハマスの越境攻撃によって、イスラエル南部に住んでいたメンバー数人が殺害された。メンバーたちは深い悲しみや怒りに直面したが、何度も話し合い、「報復は解決策にはならない」と考えるようになったという。
■イスラエルへの行き来が不可能に
両団体の連携が困難になった要因は、ほかにもある。昨年10月のガザでの戦闘開始以降、パレスチナ人がイスラエル領内に入るのはほとんどできなくなった。大規模な平和集会などをともに開くことは難しくなったが、両団体はオンラインなどで連絡をとり続けている。
今春からは平和や他者理解などについて学び、リーダーを育成するプログラムをそれぞれの場所で始めた。イスラエルとパレスチナの女性それぞれ約40人が参加し、今後、オンラインなどで双方の参加者同士が一緒にプログラムを受けられる機会を設ける予定だ。
ハジャーラさんは「子どもや大切な人を殺されたくないという思いはイスラエル人も同じ。簡単ではないが、対立より対話を求めたい」。バラク・ウォルフマンさんも「イスラエルの社会や指導者たちに、パレスチナ側にも協力できる女性たちがいると示すことはとても大切だ」と話し、「この場所でどのようにして一緒に暮らしていけるのか、考えていかなければいけない。まずは女性同士で架け橋を築きたい」と強調した。