五つのボールが飛び交うマルチなドッジ 日本代表がめざす普及と勝利
子どものころ、多くの人が親しんだドッジボール。世界の舞台で戦いながら、「競技として広めたい」と活動する2人の選手が千葉県松戸市のチームにいる。ドッジボールの魅力とは。
「ナイスキャッチ!」
「危なかったね」
東京都内にある小学校の体育館。夜、楽しそうな笑い声が響いていた。
集まっていたのはドッジボールチームのメンバーら。大学生から社会人までが参加する男女のチームだ。
この日は、松戸市内のチームに所属する小松裕也選手(32)=同市=と篠原謙生選手(26)=東京都練馬区=も加わっていた。自身の練習のため、たまに参加させてもらっているという。
笑顔と真剣な表情が入り交じる練習風景だが、なじみがあるルールとは様子が違う。
■6人対6人、外野なし
6人対6人で五つのボールを使う「マルチボール」という方式だ。
外野はないため、ボールに当たればアウトになってプレーに参加できなくなる。しかし、味方がキャッチに成功すれば、アウトになった1人が復活できるという仕組み。ワールドカップ(W杯)など国際試合で多く採用されるルールだという。
松戸市出身の小松選手は中学では駅伝や野球をしていたが、高校ではドッジボールサークルに所属。当時から都内のチームの練習にも参加するなどして力をつけてきた。2012年に初めて日本代表に選ばれ、いまは子どもたち向けのドッジボール教室やスポーツ教室を通じての普及活動にも力を入れる。
篠原選手も16年から日本代表に選ばれた。主将(混合の部)も務める実力派で、各地で教室を開催して楽しさを伝えてきた。
2人とも、今年1月にサウジアラビアで開かれたアジア選手権に出場。小松選手が男子の部で準優勝、篠原選手が混合の部で3位と活躍した。
男子選手が投げるボールは時速100キロを超すという激しいスポーツ。国内では競技としての認知度は十分とはいえないが、小松選手は「投げる、捕る、よける。誰もが活躍できる素晴らしいスポーツ」と力を込める。
来年はW杯が開催され、2人も日本代表として出場する予定だ。
篠原選手は「世界一になり、国内での認知度を上げたい。スポーツとして楽しむ人が増えるように頑張りたい」と話している。
■日本のドッジボール
1月のアジア選手権では好成績をおさめた男子と混合のほか、女子は優勝。いずれもW杯出場を決めた。日本ドッジボール協会によると、複数のボールを使うマルチボールは、世界的に見て主流のスタイルで、マレーシアやエジプトが強豪だという。一方、日本式のドッジボール(シングルボール)をしているのは日本と韓国、台湾、香港などだという。
同協会によると、日本国内の競技人口は小学生が約2万7千人、中学生以上が約4千人。