神田大介

コンテンツ編成本部ディレクター | ポッドキャスト・チーフパーソナリティ
専門・関心分野話し言葉による報道

現在の仕事・担当

2020年からポッドキャストの配信をしています。Spotify、Apple podcast、Amazon Musicなどのアプリから「ニュースの現場から」「メディアトーク」「SDGsを話そう」で検索してください!

バックグラウンド

1975年生、1994年にネットを始め、2000年入社。「イスラム国」(IS)、暴力団、ハッカーなど、割とエッジの立ったタイプの人たちを取材対象としてきました。X(ツイッター)記者の先駆けで、社名と実名を明かして仕事のために使ったのは、たぶん私が日本で最初です(2010年)。

仕事で大切にしていること

読者やリスナーのみなさんに頼ることです。朝日新聞ポッドキャストにこれまで出演した人を氏名で検索するツールや、そのもとになるデータはリスナーさんが作ってくださいました。「メディアトーク」で隔週配信している「制作会議」では、我々がリスナーさんに悩みを相談しています。

タイムライン

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「SDGs シンプルに話そう」 聴けば役立つ 世界は変えられる

■朝日新聞ポッドキャスト「SDGs シンプルに話そう」  SDGsという言葉はかなり定着しました。朝日新聞社が昨年12月に行った第8回認知度調査では、「聞いたことがある」との回答が76・3%。でも、「特に取り組むことは考えていない」とした人も47・7%いました。  小骨のような違和感は、アルファベット4文字が並ぶよそよそしさだけではないでしょう。訳せば「持続可能な開発目標」。これだけ地球を酷使して、まだ開発ですか。資本主義を支えてきた工業、IT、金融がみな行き詰まり、政府や企業が「エコ」を新たな稼ぎ口に据えただけでは。  かつて各社がISO(国際標準化機構)の規格を取るのに奔走したのを思い出します。17色をドーナツ形に配したマークも、見るのは政財界人の襟元ばかり。庶民はレジ袋を取り上げられただけ?  しかも、目標は「貧困をなくそう」「不平等をなくそう」と、46歳の私でも道徳の授業で習ったような文句が並びます。なぜ今、SDGsなんだろう。  主役が変わったんです。  たとえばエシカル消費。貧困に苦しむ労働者をこき使ったり、動植物を不当な形で犠牲にしたりして作られた商品は、買わない選択をする消費者が増えました。企業は情報開示を求められています。  たとえばESG投資。自然環境や生態系を守らない、また自社の社員を幸せにしない企業は、投資が集まらなくなりました。スマホのアプリや暗号資産で、個人にも投資の機会は広がっています。  正しさが目先のカネに勝ち、私たちの行動がじかに社会を変えられる。それがきっと、変化の本質です。けれど正義は常に、独善とも背中合わせ。複雑な世の中を照らす懐中電灯として、役立てていただきたいのが朝日新聞ポッドキャスト「SDGs シンプルに話そう」です。  町工場が挑むリユース、政治とセクハラ、バリアフリー温泉街、鶏肉を「つくる」試み、プラごみのお宝化、動物園の裏側、男性と育児・家事、消えたハタハタ、夫婦別姓の実際、スポーツとLGBT……。ヒントが詰まっています。  番組から、すぐ使えるアイデアを一つ。ハノイ支局の宋光祐記者が教えてくれました。疲れた顔でレジを打つベトナム人労働者を見かけたら、「シンチャオ」(ベトナム語で「こんにちは」)と一声かけてみませんか。それだけでも、きっと世界は変わります。

「SDGs シンプルに話そう」 聴けば役立つ 世界は変えられる

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「不愉快だから帰れ」憤る幹部 財務省が隠し続けたもの

■「森友問題」を追う 記者たちが探った真実③  森友学園への国有地売却問題を巡り、財務省が公文書を改ざんしていたことをつかんだ朝日新聞社会部の取材班。積み重ねた調査報道の成果を持って、相手の最終的な言い分を聞きに行くため、記者が財務省幹部に面会を申し込んだ。  相手は自分の部屋を持っているような幹部だった。その部屋で幹部と向かい合った記者は、取材結果を伝えた。  「公文書のこの部分が、こう書き換えられていますよね」  するとその幹部はこう返した。  「誰がそんなことを言っているの? 何を根拠に言っているのかを示さない取材には答えない」  ニュースソースを明かすよう迫った幹部。記者がそれを拒むと、最終的に幹部は記者にこう言った。  「不愉快だから帰れ」 ■積み重ねた取材 「事実は固まった」  そう言うと、自室の応接スペースからパソコンのある席に移り、何を聞いても答えなくなった。  しかし、記者には報じるにあたってどうしても聞かなければならないことがあった。万が一、財務省側に、公文書を書き換えることに何らかの正当な理屈があると、状況が全く変わってくるからだ。その点は詰める必要があった。  「答える筋合いはない」  この点に関しても、幹部は回答を拒んだ。通常、官僚は言葉を尽くし、自分たちのやっていることがいかに正しいかを理論的に説明する人が多い。この幹部の場合、想定外の取材だったのか、どう反応していいか分からなかったのか、そうした経験則を覆す対応だった。  面会に行く前に、書き換えの事実は揺るぎないという根拠を持ち合わせていた。有効な反論はなかった。事実は固まったと認定し、翌日の朝刊で報じることになった。  2018年3月2日の朝刊1面。  「森友文書 書き換えの疑い」  取材班には、財務省がどう反応するのか、読めないところがあった。報道はおかしいと言ってくるのか、あるいは認めるのか。  国会で質問された麻生太郎財務大臣は、この土地取引について市民団体の告発を受けた大阪地検が捜査をしていることを盾に、「捜査に関わるのでお答えできない」という趣旨の答弁を繰り返した。  一方で、これを報じた朝日新聞に対して「朝日新聞が書いていることだから、事実かどうか分からない」といった発言をする情報番組の司会者もいた。それどころか、「そもそも朝日新聞の報道によって国会が混乱しているんだから、朝日はどうしてこの報道をしたのか根拠を示せ」といった論調もあった。  財務省も認めない膠着(こうちゃく)状態が続くこと1週間。事態が動く。  朝日新聞は文書がどういう風に書き換えられたのか詳報した。  「森友文書 項目ごと消える」  少しずつ削ったり書き換えたりしているのではなく、1項目丸々ないものにして、ページ数が変わるほどの書き換え方をしている、との内容だ。 ■「協力させていただく」 態度を変えた財務局  そして国会審議当時は理財局長だった佐川宣寿・国税庁長官が突然、その職を辞任した。ただ、書き換えを認めて辞めるのではなく、認める前に辞めるという異例の展開。「混乱の責任を取る」ということなのか、問題の公文書を国会に提出した当時の理財局長だというのが辞任の理由の一つとされた。  財務省がようやく書き換えを認めたのは、その辞任劇から土日を挟んだ週明けのことだった。書き換えた文書は14件あり、安倍晋三首相の妻・昭恵氏の名前や、他の政治家の名前もあったが、全て削除したという内容だった。  併せて、本当の取引がどうだったのか、取引の様子が記された書き換え前の文書の内容が出てきた。国会の答弁で捨てたと言っていた文書までその後に出てきて、取引の全容が分かってきた。  その中身を見ると、異例の取引だったということがより鮮明になった。  森友学園は当初、買い取りが大前提のはずの土地を、当面は借りてその後に買いたい、という依頼を財務省近畿財務局にしていた。財務局が難色を示すと、学園の籠池泰典理事長は「実は安倍昭恵さんをあの土地に案内し、昭恵さんから『いい土地ですから前に進めてください』と言われた」と財務局に説明した。籠池氏は財務局の担当者らに、その土地の前で籠池夫婦と昭恵氏が映っている写真も見せた。  籠池氏の要求を受け入れていなかった財務局の態度がその後、「協力させていただく」と一転していた。異例の取引の始まりが何だったのか、明確になった。  18年6月、財務省はなぜ公文書を改ざんしたのかという調査結果を公表した。改ざんは理財局長だった佐川氏が主導したもので、国会の紛糾を避けるためだったとし、20人を処分して、幕引きを図った。  安倍氏は国会でかつて「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁した。昭恵氏と一緒に撮った写真が出てきた途端、財務省が態度を変えたのは明らかにみえるが、その後の国会答弁で安倍氏はこう言った。  「贈収賄では全くない。そういう文脈において全く関わっていないと申し上げている」  つまり「私や妻が関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」と国会で答弁したのは、「『贈収賄だったら辞める』という意味だったんだ」と主張する答弁だった。       ◇  当時、東京社会部のデスクとして、取材班を指揮していた羽根和人は、いまこう考えることがある。  「今回の改ざんを、ジャーナリズム以外が表に出すことはできたのだろうか」  土地取引を捜査をしていた大阪地検特捜部は、改ざんについても最終的に不起訴にした。捜査の内容はほぼ明らかにしていない。地検特捜部だけでは、改ざんは表に出ることにはならなかっただろう。国会でも野党が追及したが、改ざんを明らかにすることは出来なかった。会計検査院も改ざんを見抜くことはなかった。  「改めて思ったのは、権力は都合の悪いことを隠すことがある、それを明らかにするのは、ジャーナリズムの役割だということ」  それでも積み残された疑問はある。改ざんを主導したという佐川氏は、なぜ公文書を改ざんしなければならないと思ったのか。財務省だけで完結していたのか、どこかから改ざんを迫られるようなことがなかったのか。  信頼されるべき公文書が改ざんされたことは重く、それがまかり通れば、国が好き勝手をできるようになってしまう、という恐れがある。  改ざんの経緯について、自死した同省近畿財務局職員の赤木俊夫氏(当時54)が記したとされる「赤木ファイル」。これまで「存否も含め、答えは控える」としてきた国が一転して、今年5月6日にファイルの存在を認めた。財務省は一部をマスキング(黒塗り)した上で、6月23日にファイルを提出するとしている。 (肩書は当時)

「不愉快だから帰れ」憤る幹部 財務省が隠し続けたもの

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異例ずくめの土地取引 さらなる疑惑が浮上…でもまさか

■「森友問題」を追う 記者たちが探った真実②  国有地が大幅に値引きして売られた森友学園問題で、朝日新聞が第1報を報じたのは2017年2月9日だった。その後、政府側は国会で野党から追及されていくことになった。  国会で政府側として主に答弁に立ったのは、財務省の土地取引担当のトップである佐川宣寿・理財局長(当時)だった。隣の土地の10分の1の価格で売られていた理由についてこう答えた。  「この土地にはごみがたくさん埋まっていて、その撤去費用にお金がかかる」  「もともと鑑定価格は9億5600万円だったが、ごみの撤去費用に8億円あまりかかる。その撤去費用を差し引いて、1億3400万円になった」  本当に8億円も撤去費用がかかるのだろうか。このごみの量の積算については、後に会計検査院が「根拠が不十分」と指摘した。  そして2月17日、安倍晋三首相の口から飛び出したのが、あの答弁だ。  「私や妻がこの土地取引に関係していれば、首相も国会議員もやめる」 ■「神風が吹いた」 驚きの証言  断言だった。野党の追及は勢いを増した。  国会では、もう1人の当事者、森友学園の籠池泰典理事長(当時)の証人喚問が行われた。偽証をすると罪になるという重い場で、籠池氏はこの大幅値引きについて驚きの証言をする。  「神風が吹いた」  この取引の間に、籠池氏は安倍氏の妻の昭恵氏側に相談していた。昭恵氏の秘書のような役割をしている政府の職員が、この土地取引について財務省に問い合わせをしていたという。  「昭恵さんの名前で物事が動いたんだろう」  籠池氏はこんな見方を示した。野党側は、財務省が昭恵氏の存在、また安倍氏に忖度(そんたく)して値引きをしたんじゃないか、という追及をさらに強めていくことになった。  「少なくとも通常ではない取引だったんじゃないか」  その謎を解くべく、朝日新聞は大阪・東京の社会部で合同の取材班をつくった。東京の社会部は国会や財務省周辺、大阪の社会部は森友学園や土地取引に関わった関係者らを取材していくという役割分担。当時東京社会部でこの取材班を仕切った羽根和人デスクはこう振り返る。 ■浮上した改ざん ひょっとして財務省が?  「薄皮をむくような感じで事実を積み重ねていかなければいけないなと思っていた」  取材を進める中で、まずはこの土地取引が「特例」というふうに財務省では言われていたことが分かった。  また、通常の国有地売却は一括払いが基本にもかかわらず、この土地の場合は異例の分割払いを認めていることも明らかになった。  そうした取材の中で、ある疑いが浮上した。  「財務省が公文書を改ざんしたのではないか」  公文書は民主主義の基本だ。公文書を元に国会審議が行われ、行政は全て公文書で動いている。それを改ざんするということは、行政をゆがめ、国民にうそをつくことと同義と言える。  財務省は、国の中枢を担う「省庁の中の省庁」といわれる。その財務省が本当にその公文書を改ざんするのだろうか。  国会答弁に立っていた佐川氏の態度はかたくなで、説明に消極的だった。その姿勢の不自然さを考え、「改ざんはひょっとしてあり得ない話でもないと思った」と羽根デスクは言う。  取材班はこの後、解明のために、この土地取引に関する膨大な資料と向き合うことになる。どの文書のどの部分が、どう改ざんされたのかを特定する、根気のいる作業だった。  さらに取材を進め、改ざんされたことを証明するだけの材料がそろった。取材で得た情報を、財務省に直接「当て」にいくという段階にまで至った。      ◇  朝日新聞が改ざんの情報をつかんだ経緯や根拠について、羽根は「一定程度説明責任はある。一方でニュースソースは守らなければいけないし、何を判断材料にしたのかは、言えないものもある。情報源を秘匿できないのならば、ジャーナリズムが成り立たない」と話す。  情報源が分かれば、政府の犯人捜しが始まったり、その人の身に危険が起きたり、処分されたり、ということが起こりうるからだ。これは朝日新聞だけではなくて、全てのメディアがそうしている不文律だ。  朝日新聞は政権に批判的だからそういうあら探しをしているんじゃないか、との疑念もぶつけられるが、羽根はこうも言う。  「最初から疑いを持ってやっているわけでなくて、いろいろな事実、情報が出てくる中で、疑問が出てきたから、取材をする。イデオロギーのようなものはむしろ報道の邪魔で、色眼鏡で見ると、真実は見えなくなるんですね。そういったものは極力排して、事実を公平な目で見ることをしないと、特に調査報道は成り立たない」

異例ずくめの土地取引 さらなる疑惑が浮上…でもまさか
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