(社説)党首討論 意義踏まえ定着確実に
石破首相になって、半年ぶり2回目となる党首討論が行われた。トランプ関税への対応や日米安保のあり方など、重要な政治課題について、おおむね落ち着いた雰囲気の下、それなりにかみあったやりとりが展開された。
それだけに、全体で45分というのは、議論を深めるには足りない。十分な質疑時間を確保したうえで、首相や政権の枠組みが代わっても実施されるよう、定例開催を確実に定着させる必要がある。
冒頭、立憲民主党の野田佳彦代表は、民主党政権の首相として参加した経験を踏まえ、党首討論は重要なテーマで与野党が膠着(こうちゃく)状態に陥った時、「局面打開の舞台」になると、その意義を語った。
首相も、特に外交や安全保障の分野で与野党が共通認識を持つ必要性を指摘。党利党略を離れ、国のあるべき姿について「可能な限りの一致点を見いだしていく」意義があると応じた。
7年前、質問をはぐらかし、延々と持論を述べる安倍首相との討論後、立憲の枝野幸男代表が「今の党首討論は、ほとんど歴史的意味を終えた」と語り、次の討論の中で安倍首相が「本当に歴史的な使命が終わってしまった」と応じたのとは大違いだ。
野田氏と首相は、赤沢亮正経済再生相の訪米への評価では平行線だったが、自由貿易を守るために欧州連合(EU)と連携していく必要性では一致。日本が環太平洋経済連携協定(TPP)の事務局を引き受けたらどうかという野田氏の提案に、首相が課題を挙げつつも「真剣に考えたい」と答える場面もあった。
衆院解散の当日だった前回の党首討論は、特例として80分間に延長されたが、今回は通例通りと、45分間にとどまった。野田氏こそ30分だったが、日本維新の会の前原誠司共同代表は9分、国民民主党の玉木雄一郎代表は6分。前原氏は日米安保と憲法改正、玉木氏は年金改革などをテーマにしたが、この短さではまともな議論は望めない。
与野党は例年、新年度予算成立後の4、5、6月に各1回開催することで合意し、きのうがその1回目だった。定例化するのなら、討論時間を延ばすだけでなく、野党の党首間で融通しあって、それぞれに一定の時間を割り振るのがよい。多くの人が視聴しやすい夜間の実施も、ぜひ実現してもらいたい。
国会改革は党首討論の活性化だけではない。野党議員が提出した法案がたなざらしにされがちな現状を改め、議員同士の自由討議を増やすなどの改革にも取り組むべきだ。
- 【視点】
党首討論の定例化は必要だろうし、ここでも「多くの人が視聴しやすい夜間の実施」とあるように、見せ場を作るような仕掛けを与野党で工夫すべきだろう。インターネットで情報流通が加速する中、党首討論は、SNSなどで切り取られるだけの議論ではなく、時間
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