(社説)戦後80年 歴史の教訓 首相談話で

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 第2次世界大戦後の国際秩序が大きく揺らぐ中、日本は戦後80年の節目を迎える。

 国策を誤り、国民を存亡の危機に陥れ、アジアをはじめ諸外国の人々にも甚大な被害を与えた歴史の教訓を改めて思い起こし、平和国家としての誓いを新たにすることには、今日的な意義がある。

 石破首相は、首相個人としてのメッセージなどではなく、過去3回の節目と同様、閣議決定した「首相談話」の形で、内外に日本の姿勢を明確に示すべきだ。

 戦後50年にあたる1995年の終戦記念日に、時の村山首相は、日本の「植民地支配と侵略」について「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明し、国際協調を通じて平和の理念と民主主義を広めるとした談話を発表した。戦後60年には小泉首相戦後70年には安倍首相が、それぞれ談話を公表している。

 戦後80年となり、実際に戦争を体験した人が少なくなる中、首相は繰り返し、先の戦争の「検証」の重要性を指摘してきた。有識者による私的諮問機関を設ける意向だというが、閣議決定を伴う談話は見送り、個人としてのメッセージを出す方針だという。

 自民党内には、安倍談話によって戦後の「謝罪外交」に区切りがついたとして、新たに談話を出すことに否定的な意見が根強い。政権基盤の弱い首相は、党内に亀裂を招く事態を避けたいのだろうが、あまりに内向きで、大局観を欠く判断と言うほかない。

 安倍談話は「痛切な反省」と「心からのおわび」に言及しつつも、「私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べ、歴史認識をめぐる問題に終止符を打つ狙いが明らかだった。

 しかし、過去の過ちを決して忘れず、未来に生かす誓いを更新し続けることは、日本への信頼を高めることにつながるはずだ。安倍談話のくびきにとらわれ、80年談話を見送ることになれば、国内的にも対外的にも、日本が反省を忘れたという誤ったメッセージにもなりかねない。

 政府はこれまで、先の戦争を自前で総括することをしてこなかった。首相が今回、正面から検証に取り組むというのなら評価したい。首相談話を出さずに済ますための方便にしてはならない。

 また、本格的な検証となれば、短時日で結論を得ることは難しかろう。終戦記念日の首相談話とは切り離し、期限を区切ることなく多角的な検討を加え、後世に残る成果をめざすべきだ。

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