(社説)百条委報告書 斎藤氏は責任を免れぬ
兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)が、斎藤元彦知事らに対する元県民局長の男性の告発について、報告書をまとめた。斎藤氏による職員へのパワハラと指摘された行為や贈答品受け取りに伴う問題点を認め、男性の告発を「公益通報に当たる可能性が高い」とした。
知事とともに県民を代表する県議会が、公益通報の専門家の意見も踏まえ導いた結論は重い。男性を通報者と特定し、保護を欠いたまま調査を進めた県、とりわけ一連の対応を指示した斎藤氏は責任を免れない。百条委は厳正に身を処するよう求めた。どう応えるのか、対応が問われる。
男性は昨年3月、斎藤氏らに関する「七つの疑惑」を記した文書を一部の県議やマスコミに送付。自ら入手した斎藤氏が片山安孝副知事(当時)ら側近に調査を指示し、男性は5月、勤務中に公用パソコンを私用に使ったことなどを理由に懲戒処分された。
報告書は、「パワハラ行為と言っても過言ではない言動があった」、贈答品の受領は「個人として消費したととらえられても仕方がない行為もあった」とした。男性の文書送付は、マスコミなどを通じた「外部公益通報」に当たる可能性が高いと結論づけた。
特に問題視したのは県の初動だ。告発された斎藤氏が調査を指示し、同様に告発された片山氏が男性を調べた経緯も踏まえ、「不適切な対応に終始した」と批判した。
百条委は専門家の見解を集めた。政府の有識者会議の複数のメンバーや、実務に詳しい弁護士らが強調したのは、次のような点だ。
公益通報に該当するかは、中立・公正な態勢で慎重に調査すべきだ。内容の真実相当性も不正の目的の有無も、告発された当事者が判断することではない。通報者の特定はけっして許されない――。
男性の文書について、斎藤氏は早々に「事実無根」「うそ八百」と断じ、男性への処分も口にした。そうした知事の言動が、公益通報者保護制度をどれほど傷つけたか。今回の問題も一因に法改正案が閣議決定されたことにも、事態の深刻さがうかがえる。
百条委が設置された昨年6月以降、兵庫県では混乱が続く。告発した男性らが死亡。非公開の百条委会合の音声録音を維新県議が立花孝志氏に提供し、男性の社会的評価をおとしめる私的情報がSNSなどで拡散、百条委自身も誹謗(ひぼう)中傷にさらされた。
斎藤氏の今後の振る舞いとさらなる県議会の対応以外にも、問題は山積している。そのことも忘れてはならない…
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