(社説)財政再建目標 「未達」は放漫の帰結だ

写真・図版

 政府が「達成できる」と言ってきた財政健全化の目標が果たせない見通しになった。税収増にあぐらをかき、支出を漫然と膨らませ続けたためだ。度重なる実現先送りを反省し、財政全般の改革を急ぐ必要がある。

 政府が「中長期の経済財政に関する試算」の最新版を示した。25年度の国・地方の基礎的財政収支は4・5兆円の赤字で、同年度に黒字にする目標に届かないという。

 基礎的収支は、政策経費を新たな借金なしでまかなえるかどうかを示す指標だ。20年余り前から歴代政権は、この黒字化を財政再建に向けた最初の目標に掲げてきた。ただ達成時期は再三先送りされ、安倍政権下の18年度に、25年度が目標になった。

 ここ数年は、税収が伸びて収支の改善が続き、昨夏の試算では25年度に8千億円の黒字を見込んだ。だが今回は一転して下ぶれした。直接の原因は、石破政権が昨秋に「経済対策」として巨額の支出追加を決め、相当部分が25年度に使われることにある。

 政府自らが掲げ、直前まで実現可能としていた黒字化が遅れれば、財政への信頼は傷つく。歳出正常化の努力を怠った自公政権の責任にほかならない。水膨れした補正予算が毎年の恒例行事になっているのが典型だ。放漫な姿勢を改めなくてはならない。

 目標見直しは避けられないが、安易な先送りは、財政の健全性を保つ意思への疑念を招く。問題点の検証と改善が不可欠だ。補正予算を組む時には、基礎的収支への影響も示すべきではないか。

 与野党には「単年度の収支にこだわる必要はない」などと、目標の意義を軽んじる声もあるが、無駄づかいや借金づけを助長しかねない。国民民主党が与党との協議で大規模な減税を主張しているが、慎重な対応が求められる。

 今回の試算は、黒字化の時期を26年度と見込む。その実現に加え、黒字の定着や、GDPの2倍を超える公的債務残高の割合を着実に下げる道筋を描くことも重要だ。

 財政に規律を取り戻すには制度改革も欠かせない。専門家や国会議員からは、さまざまな提案が出ている。

 たとえば、健全化目標を法定化し、歳出・歳入を複数年度で制御する枠組みを導入する。あるいは、専門家が財政・社会保障の試算やルール順守の監視などを行う「独立財政機関」を置いて、建設的な議論の環境を整える――。

 うまく機能すれば、中長期の視点を失いがちな政治の弱点を補える。具体策の検討に踏み出す時だ…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

連載社説

この連載の一覧を見る