(社説)百田氏の暴言 公党の党首たりえない

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 作家の百田尚樹氏は、これまでも物議をかもす発言を重ねてきた。ただ、今や、国民の税金である政党交付金を受ける国政政党を率いる立場にある。撤回・謝罪こそしたものの、このまま党の代表でいられるのか。日本保守党の公党としての姿勢が問われる。

 今回の発言は先週、自身のユーチューブ番組で、少子化対策を議論した際に飛び出した。「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超えて独身の場合、生涯結婚できない法律にする」「30超えたら、子宮を摘出する」などと述べた。

 「小説家のSFと考えてください」などの前置きはあったが、女性の人権を完全に無視し、女性を子どもを産むための存在とみなす暴言だ。

 SNSなどでの批判を受け、百田氏は「それくらいのことをしないと社会構造の変革はできないという意味で言った」と釈明、発言を撤回し謝罪した。まじめに少子化対策を考えているとはいえず、国政にかかわることになった責任感は全く感じられない。

 特に、軽々に「子宮を摘出」と口にする神経が信じられない。「戦後最大の人権侵害」ともいわれる旧優生保護法下での強制不妊手術では、法で認められていない子宮摘出もあった。国会は衆院解散を前に、被害者救済をめざす新法と謝罪決議を全会一致で可決したばかりである。

 日本保守党は昨年9月、自民党LGBT理解増進法を成立させたことに反発した百田氏らによって設立された。親交のあった安倍元首相亡き後の自民党の姿勢を厳しく批判。その後、名古屋市河村たかし市長を共同代表に招き入れ、X(旧ツイッター)やユーチューブなどを活用して支持を広げてきた。

 衆院選では「日本の国体、伝統文化を守る」として、LGBT法や皇室典範の改正などを訴え、愛知1区で河村氏が当選、比例東海・近畿ブロックで各1議席を獲得した。

 比例票の合計は約115万票。得票率2%以上となり、発足して1年余りで、公職選挙法上の政党要件を満たした。24年分の政党交付金は2800万円になる見通しだ。

 百田氏はNHK経営委員だった10年前の東京都知事選の応援演説で、対立候補を「人間のくず」と呼んだり、自民党の会合で「沖縄の二つの新聞社は潰さないといけない」と述べたりしてきた。

 多様な国民を代表する与野党の議員が、議論を通じて合意形成をめざす。そんな国会の意義を尊重しない代表の下で、公党の責務を果たすのは難しかろう。

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