(社説)公明代表交代 「原点」見据え出直しを

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 衆院選で公示前の32から24に大きく議席を減らした公明党が、党の立て直しを託す新たな代表を内定した。自民党との長年の連立で薄れた「清潔な政治」「大衆福祉」「平和」といった党の原点に立ち返ることなしに、退潮に歯止めはかかるまい。

 公明党がきのうの中央幹事会で、辞意を表明した石井啓一代表(66)の後任に、斉藤鉄夫国土交通相(72)の推薦を決めた。あすの臨時党大会で正式に承認される。

 15年にわたり代表を務めた山口那津男常任顧問(72)から、世代交代のためにバトンを引き継いだばかりの石井氏が落選し、在任40日余りで退任することになったのは、大きな誤算に違いない。

 衆院で与党が過半数割れし、政権運営は厳しくなる。来年夏には参院選や公明党が重視する都議選も控える。当選11回で、幹事長、政調会長などを歴任したベテランに頼らざるをえないのだろうが、山口氏と同世代の斉藤氏の登板は、党の人材不足を露呈するものにほかならない。

 公明党は小選挙区で、伝統的に強い地盤を誇る大阪の4選挙区すべてで日本維新の会の候補に敗れるなど、4勝7敗に終わった。比例区は3減の20議席。得票は初めて600万票を割り込み、ピーク時から3割以上減った。石井氏ら幹部に加え、次世代を担う中堅が相次いで落選したことは、党の今後に深刻な影響が避けられない。

 公明党はこのところ、支持母体の創価学会員の高齢化などに伴う集票力の低下に悩んできた。加えて今回は、裏金問題に対する自民党への逆風をもろに受けたとみられる。

 自民党が裏金問題を受けて非公認にしたり、比例区への重複立候補を認めなかったりした30人以上に、公明党は推薦を出した。集票での見返りを期待してのことだが、「クリーンな政治の実現」を公約に掲げても、これでは見透かされるだけである。

 「平和の党」の看板は、岸田政権が進めた敵基地攻撃能力の保有や殺傷兵器の輸出解禁の容認などで、色あせる一方だ。「大衆福祉」についても、立憲民主党が「分厚い中間層の復活」、国民民主党が「手取りを増やす」などと訴えて躍進する一方で、公明党からは有権者に響く具体的なメッセージが乏しく、埋没したと言わざるを得ない。

 自民との関係維持を最優先に、立党の精神をなおざりにしていては、展望は開けまい。少数与党として、野党が代表する国民の声にも向き合い、丁寧な合意形成に力を尽くす必要もある。

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