(社説)鹿児島県警 捜索の理由 説明求める
鹿児島県警が、捜査への批判などを発信してきたウェブメディアに対し、家宅捜索を行っていた。
言論、表現の自由にかかわる問題だ。県警はどう考えるのか。速やかに事実関係を公表し、どのような検討を経て捜索に至ったのか、公の場で説明を尽くさねばならない。
一般に、報道関係者への捜査・捜索は、言論・表現の自由や国民の知る権利にもかかわるため、容疑の内容や重大性、取材活動・報道の正当性などに照らして必要性を慎重に検討し、抑制的かつ例外的に考えるべきものだ。
今回は、県警自身の問題を指摘するメディアに対して行われ、その取材源を探知する結果につながったとみられる点も見逃せない。
もし、当局に都合の悪い情報が出た場合に報道関係者への捜索が常態化し、取材源が探られることになれば、自由な取材は妨げられ、国民の知る権利が損なわれてしまう。こうした観点について、県警に詳細な説明を求めたい。
このウェブメディアは、県警が捜査書類などのすみやかな廃棄を職員に促した内部文書「刑事企画課だより」について、文書の写しとともに問題を提起していた。また、元県医師会職員を巡る事件の捜査に疑問を呈する記事を展開。県警の内部資料「告訴・告発事件処理簿一覧表」の写しをもとに批判した。
県警は3月に処理簿一覧表が漏れたことを公表。4月8日に曽於署員(当時。その後懲戒免職)を守秘義務違反の疑いで逮捕した。逮捕容疑には、ある人物の犯歴を漏らした疑いも含まれていた。
ウェブメディアを主宰する男性の弁護士によると、捜索は同じ日に男性を参考人として行われ、パソコンと携帯電話を押収された。翌日、パソコンが返還された際、男性は一覧表のデータ消去には同意したが、同意しなかった刑事企画課だよりも消去されたため、県警に苦情を申し出た、という。男性側は「報道弾圧だ」と反発している。
県警は、元署員への捜査の過程で、前生活安全部長による情報漏洩(ろうえい)も判明したとしており、捜索が端緒になったと見られる。前部長は、このサイトに記事を投稿したジャーナリストに内部情報を提供した疑いで逮捕された。
前部長の弁護士は、前部長の行為は「いわば内部通報のようなもの」と主張。県議会の質疑でも「公益通報者の保護に支障が出かねない」と懸念が示されている。
一連の疑念と批判に、県警はどう答えるのか。警察への信頼にかかわる問題である。