(社説)司法裁の命令 ラファ攻撃は許されぬ
国連加盟国としての義務を果たさなければ、世界で信頼を失うばかりでなく、国際秩序の土台を成す「法の支配」を傷つける事態にもなりかねない。イスラエルはただちにガザでの戦闘をやめ、停戦交渉の席に戻るべきだ。
国連の最高司法機関である国際司法裁判所(ICJ)が24日、ガザ南部ラファでの軍事作戦の即時停止をイスラエルに命じた。
昨年10月に始まったイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘で、ガザでの死者は3万5千人を超えた。ラファには戦火を逃れた約150万人が身を寄せていたが、イスラエルは今月7日に地上戦を開始した。
イスラエル側は「限定的な作戦だ」と主張するが、80万人以上が避難を余儀なくされた。ハマスに捕らえられた人質の解放のための停戦交渉も作戦開始で中断したままだ。
ICJは、これまでジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「あらゆる手段」を講じるよう求めていたが、軍事作戦の停止に踏み込んだのは初めてだ。その意味は重い。
理由として、ガザの人道状況が壊滅的なレベルに達していることを強調した。先のICJの決定をイスラエルが不法に無視し続けていると認定したに等しい。
ICJの命令には法的拘束力があり、履行しなければ国際法違反になる。だが、従わない場合に強制的に執行する手段はない。イスラエルの政府高官は「戦い続ける」との声明を出した。
今後、命令不履行の問題が国連安保理に持ち込まれた場合、米国がイスラエル支持の立場をとり続ければ、国連憲章が掲げる「法の支配」の理念は深く傷つくだろう。
バイデン米大統領はラファでの大規模な地上作戦に反対すると繰り返している。なし崩し的に拡大するラファ侵攻を許さぬ姿勢を貫き、武器供与停止などでイスラエルへの圧力を強めてもらいたい。
国際人道法に反するイスラエルの過剰な軍事報復への批判は日に日に高まる。
国連総会は今月、パレスチナの国連加盟を支持する決議を採択した。143カ国の賛成に対し、反対は9カ国にとどまった。その後、ノルウェー、アイルランド、スペインがパレスチナを国家として承認すると発表した。
イスラエルのネタニヤフ首相は「テロを利する」などと反論するが、筋違いだ。パレスチナ国家の樹立を否定し、パレスチナ人の命を軽んじる独善的な姿勢こそが、外交上の孤立を深めている現実から目をそらしてはならない。