(社説)国スポのあり方 求められる姿 再検討を

社説

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 どんな大会が求められているのか。どのような形なら地域社会に貢献できるのか。今年から「国民体育大会」の名称を変え、「国民スポーツ大会」となった大会のあり方に改めて議論が広がっている。

 この大会は1946年に始まり、文部科学省と日本スポーツ協会(JSPO)、開催地の3者による共催で、都道府県の持ち回りで開かれてきた。いま焦点化する背景には、2035年大会の招致を検討中の三重が開催すれば、2巡目を終えることがある。

 3巡目について、全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事が「全くの白紙の状態で議論した方がいい」と発言。個人的な考え方として「今のやり方を一回廃止する。ほかのやり方を考えればいいんじゃないか」と踏み込んだことで波紋は大きく広がった。

 振り返れば国スポをめぐる改革の議論は、1巡目が終わる1980年代から続いてきた。大会の肥大化、開催地が背負う重い経費負担など、大きな課題も変わっていない。

 30年以上にわたり議論を重ねながら、改革がいずれも小手先にとどまってきたのは、大会を国内最大・最高の総合スポーツ大会と位置付けていることが大きい。その上、「毎年開催」「都道府県の持ち回り開催」「都道府県対抗形式」「開催県は予選抜きで出場できる制度」を動かしがたい骨格として大会を組み立てているせいもある。

 その結果、大会は、巨額の経費の大半を負担する自治体の重荷となり、開催地の優勝へのこだわりといったひずみが続く要因となっている。

 議論がJSPOを中心としたスポーツ関係者を主体に進み、それぞれの利害の最大公約数をとるようにまとめられてきたことも見逃せない。

 JSPOは村井氏の発言を受け、現在進める大会の見直しについて、知事会の代表も招き改めて検討会議を設けると決めた。メンバーには、スポーツ関係者以外からも広く人材を招くことが不可欠だ。

 そもそも、国際大会をはじめイベントは増えており、トップ選手の参加を前提にした「最高の大会」と位置づけるには無理がある。むしろ、若い世代や障害者などを含め幅広い分野や世代が取り組める機会や方策を探る方向へとかじを切るべきではないか。

 もし3巡目に進むのであれば、スポーツをとりまく環境の変化を見据えて、これからの地域社会がスポーツに何を期待するのか、スポーツが果たすべき役割は何か、まずその将来像をきちんと描いた上で、「新たな国スポ」を設計することが望まれる。

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2024年4月30日23時59分 投稿
    【視点】

    これからのスポーツのあり方を考える重要な問いかけ。国内経済が停滞する中、オリパラのような国際大会だけでなく、国スポでさえも巨額の赤字を抱えてまで開催することはラグジュアリーでしかない。それでも開催するためには、その意義をしっかりと打ち出さな

    …続きを読む