(社説)基金の見直し 規律強める法制度を

社説

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 国の基金事業について、政府が点検の結果と見直し策を公表した。水膨れを改める第一歩ではあるが、まだ力不足だ。予算の無駄遣いを防ぐには、実効的なルールと監視体制の強化が欠かせない。法制度化も考える必要がある。

 基金は、省庁が複数年度にわたって支出する予算をまとめて積んでおく仕組みだ。コロナ禍をきっかけに乱立し、脱炭素化や経済安全保障などの分野にも広がった。全体の規模も3年間で7倍に膨らみ、22年度末の残高は約17兆円に達している。

 見積もりが過大で支出が想定を大きく下回ったり、目標も検証もないまま多額の支出が続いたりする例が少なくない。基金から出す補助金の審査など中核業務を企業に任せる事例も判明した。公金を扱う意識の乏しさにあきれるしかない。所管省庁と後押しした政治家の責任は重大だ。

 今回の点検を踏まえ、政府は200の基金事業のうち15を廃止し、使う見込みがない約2400億円を新たに国庫に返させるという。当然の対応だが、ここ数年の膨張ぶりと比べれば、切り込み不足だ。継続的な点検が求められる。

 今後は、原則10年以内の終了時期や具体的な成果目標の設定を義務づけ、検証もさせる。新たな予算計上は3年分を上限にするという。方向性は妥当だが、問題はそれを貫けるかだ。省庁や与党の抵抗も予想され、目標設定や達成度の検証が「お手盛り」になる懸念が拭えない。

 それを防ぐには、第三者を交えて透明性を確保することが必要だ。目標を達成できないなら縮小・廃止する仕組みも整えなければならない。

 基金の設置要件も厳格化すべきだ。今のルールは「各年度の必要額が見通せず、弾力的な支出が必要なもの」などと定めるが、あいまいさがあり、乱立を許してきた。

 そもそも憲法は、国の予算は毎年度、国会の審議・議決を受けると定める。その趣旨に照らせば基金は例外的な仕組みのはずだが、設置要件や運営ルールは政令や閣議決定に過ぎず、形骸化している。制度の根拠を法律で定め、規律を強めるべきではないか。

 政権は、昨秋の補正予算でも半導体産業支援などに4兆円余りを計上している。弊害を直視し、基金に安易に巨額を投じる姿勢を根本から改めなければならない。

 基金の乱用は、国民の代表が税金の使い方を統制する財政民主主義の空洞化にもつながる。国会や会計検査院は問題の重大さを認識し、監視を強めてほしい。

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