(社説)米軍PFAS 調査と対策 住民本位で

社説

 健康への影響が懸念されるのに、汚染源の調査すらままならない。対策に必要な費用も自治体任せ。こんな理不尽な対応が、いつまでも許されていいわけがない。米軍と日本政府は住民の不安に正面から向き合い、実態解明と環境浄化を急ぐべきだ。

 発がん性が指摘される有機フッ素化合物(総称PFAS〈ピーファス〉)が、日本各地の米軍基地周辺で検出されている。泡消火剤などに含まれているもので、工場の周りなどでも検出されているが、日米地位協定の壁に守られた米軍基地の場合、日本側の調べがほとんど及ばないのが実情だ。

 米軍基地が集中する沖縄県は2016年以降、立ち入り調査を6件申請したが、認められたのは、普天間飛行場から泡消火剤が大量に外に漏れた時など2件にとどまる。

 地位協定により、基地の管理権は米軍にある。沖縄県などの要望を踏まえ、日米両政府は15年に「環境補足協定」を交わしたが、立ち入りが可能になったのは、環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合と、基地返還前の調査に限られる。それとても、米側が受け入れを認めることが前提だ。有効に機能しないなら、日本側の権限を強化する見直しが求められる。

 一方、沖縄県がこの8年間に、水質の分析や原因物質の除去などに要した予算は計32億円。うち10億円は沖縄防衛局の補助を受けたが、県は今後10年間で80億円以上が必要になるとみる。汚染が米軍基地由来なら、米軍に施設・区域を提供している国が対策費を負担すべきだという沖縄県の主張はもっともだ。

 米国は本国では規制を強化し、大規模な対策予算を組んでいる。ハワイでは、市民の抗議デモを受け、海軍の燃料貯蔵施設の閉鎖を決めた。自国民の健康被害や世論には敏感に対応するのに、日本の住民の懸念は置き去りというのでは、「二重基準」のそしりは免れない。

 米軍はドイツの基地では、自らの負担で汚染の調査や浄化作業をしているという。ベルギーや韓国の基地でも、水質検査を実施しているとされる。日本での取り組みの不十分さが際立つ。

 PFASの汚染は、沖縄だけでなく、東京都の横田、神奈川県の横須賀、厚木、青森県の三沢など、全国の米軍基地で報告されている。国民の健康を守るのは政府の責任だ。米軍に対し、調査に協力し、再発防止に万全を期すよう、強く求めるべきだ。地域住民の理解や支持なしに、基地の安定的な運用など望めないことを忘れてはいけない…

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    阿部藹
    (琉球大学客員研究員・IAm共同代表)
    2024年2月9日12時34分 投稿
    【視点】

    PFAS汚染は沖縄では切迫した脅威だ。PFASが検出されたために現在取水を止めている本島中部の水源からの取水が、渇水のため、明後日(11日)にも再開される見込みで、今朝の地元紙の一面にも浄水器の売り上げが増加しているという記事が掲載されてい

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