(社説)COP28閉幕 化石燃料脱却を確実に

社説

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 国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、「化石燃料からの脱却」をうたった文書を採択して閉幕した。化石燃料の「段階的廃止」までは踏み込めなかったが、それでも合意の意味は大きい。日本も真の脱炭素に向け、対策をさらに進めなくてはならない。

 COP28では、国際ルール「パリ協定」の下での対策を点検し、産業革命前と比べた平均気温はすでに1・1度上がり、現状の削減目標では上昇が3度近くに及ぶと指摘した。1・5度までに抑えるために、温室効果ガスの排出を35年に19年比で60%減らすことを合意に盛り込んだ。

 対策として、化石燃料からの脱却を今後10年で加速させることなどを掲げた。欧米は「段階的廃止」を求めたが、産油国の反対を受け、中間的な「脱却」でまとまった。世界の再生可能エネルギーの設備容量を30年までに3倍にすることも合意に入った。

 会合の成果を生かすために日本は何をすべきなのか。

 再エネ拡大について、日本政府は「適地が少ない」と主張する。だが、建物の屋根や公共施設、荒廃農地などに太陽光発電の余地は十分あり、洋上風力も拡大可能だ。技術開発を進めて途上国支援につなげれば、将来のビジネスの広がりも期待できる。

 合意文書には、「排出削減対策のない石炭火力発電の段階的削減を加速」との文言が前回と同様に盛り込まれた。日本は、石炭とアンモニアの混焼を「対策」と位置づけている。

 しかし、アンモニア製造は膨大なエネルギーが必要で、肥料の生産とも競合する。混焼ではCO2削減量も限られ、現状では脱炭素策としての説得力は乏しい。かねて石炭火力延命のための「見せかけの環境配慮」と非難されており、今回も環境NGOが「化石賞」に選んだ。

 一方、合意文書は脱炭素の手段として初めて原子力を例示し、日本を含む20カ国以上が世界全体の原発の容量を50年までに3倍にする宣言に賛同した。だが、原発は建設に時間がかかり、廃棄物問題も未解決だ。有事に攻撃されるリスクも顕在化した。日本は重大な自然災害も多く、原発頼みは選択肢にならない。

 石炭火力にせよ原発にせよ、日本の政府や経済界は、当面の利益を得られる既存設備の延命にこだわる傾向が強い。そうした姿勢を続ければ変化から取り残され、将来の利益も損なう。気候危機はすでに現実化している。化石燃料からの脱却を確実にする努力に、集中すべきときだ。

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