(社説)ゴルフクラブ入会 出自で拒否は許されぬ

社説

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 出自を理由にゴルフクラブへの入会を拒めるか。法廷で何度も争われてきた問題で、新しい判決が出た。

 名古屋高裁は、元韓国籍であることを理由に入会を断られた男性の訴えを認め、岐阜県のクラブに慰謝料支払いを命じた。入会拒否は法の下の平等を定めた憲法14条に反する不合理な差別で、国際人権規約や人種差別撤廃条約にも反し、社会的に許容しうる限度を超えて違法と判断した。

 原告は事業を営む在日韓国人3世だったが、18年に日本国籍を取得した。クラブは外国籍や元外国籍の会員数を制限しており、入会を断った。

 一緒に申請した知人の日本人は手続きが進んだ。なぜ自分はだめなのか。抗議すると同時に、国籍について知人に明かさざるを得なくなった。差別にさらされてきた原告のやるせなさは、一層募っただろう。判決は、入会拒否が、原告の人格権を傷つけたとした。もっともな指摘だ。

 実はこうした入会拒否は珍しくない。クラブはゴルフ愛好者が集まる私的な団体だ。憲法で保障された結社の自由がある。平等の権利とどう調整を図るか。司法の判断は分かれていた。今回も一審・津地裁四日市支部は、男性の訴えを退けていた。

 ここで一歩進んで考えるべきなのは、クラブ側が守ろうとする価値は何かだろう。

 今回のクラブは理事会の申し合わせで外国籍を制限してきた。行動様式や風習が日本人と異なり、多くなり過ぎるとクラブの雰囲気が変わってしまうという。他の訴訟でも同様の主張がされてきた。

 日本社会は経済、労働の担い手としていま以上に多くの外国人を受け入れようとしている。そんな中、この主張をずっと続けるのだろうか。

 性別による差別も問題だ。東京五輪会場のゴルフクラブは女性を正会員にしていなかったことが発覚し、認めるよう規則を変更した。

 ゴルフは、英国貴族の社交場として発展したという。格式を重んじ、マナーに厳しい。ただ、大衆的なスポーツになっても変化を嫌うのか。今回のクラブは会員約1500人で、一定の社会性を持つことは判決も言う通りだ。

 日本人にも色々な人がいる。クラブの雰囲気を維持したいなら、個別の審査を厳しくし、入会後のマナー順守こそ徹底するべきだろう。外国籍の排除は偏見が漂ううえ、目的達成も疑わしい。

 自治を主張するなら、自主的に改革する勇気こそ必要ではないか。多くのクラブ会員に、まず規約や申し合わせを読み直すことを勧めたい。

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