(社説)女性起用ゼロ 「活躍促進」は口だけか

社説

[PR]

 首相官邸のひな壇に、ともに並ぶ二十数人が男性ばかりという光景が、異様だとは想像できなかったのだろうか。

 過去最多に並ぶ5人の女性閣僚が任命された内閣改造から一転、副大臣26人と政務官28人の計54人の人事では、女性の起用はゼロとなった。岸田首相は改造後の記者会見で、自民党が「女性議員の活躍促進を最重要課題に掲げた」と述べたが、口だけと言われても仕方あるまい。

 多様な国民の意見を政策決定に公平・公正に反映させるために、政治分野における女性の参画拡大は特に重要である――。20年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画にそう記したのは、他ならぬ政府自身である。

 指導的地位に占める女性の割合は、「20年代の可能な限り早期に30%程度」とするとした。第4次計画の「20年に30%程度」から後退した、この目標にすら逆行するようでは「政治分野が率先してあるべき姿を示す」という計画の文言も空しく響く。

 首相は「(政務三役を)チームとして人選を行った結果」であり、女性2人を起用した首相補佐官も合わせれば、「老壮青、男女のバランス」はとれているという。

 しかし、実際に考慮したのは、各派閥の要望であり、派閥間のバランスだろう。自民党には現在、衆院21人、参院24人の計45人の女性議員がいるが、推薦名簿に女性を入れない派閥が多かったようだ。

 ならば、首相官邸が全体を見渡して調整を加えるのが、本来である。秘書官を含め、首相の意思決定を周辺で支える主要な官邸スタッフが、男性で占められていることが、多様性の意義に思いが至らぬ一因となってはいないか。

 女性に限らず、閣僚になるには、副大臣や政務官として経験を積み、専門性を磨いておくことが有用だ。女性を積極的に副大臣や政務官に就けることは、女性閣僚を増やす道でもある。

 国際的にも極めて低い水準にとどまる女性議員の数そのものを、抜本的に増やすことも不可欠だ。衆院議員に占める女性の割合は1割に過ぎず、候補者男女均等法が18年に施行された後も、改善の歩みは鈍い。

 特に対応が遅れていた自民党はようやく、この6月、「女性議員の育成、登用に関する基本計画」を定め、同党の国会議員に占める女性の割合を、現在の11%から10年間で30%に引き上げる目標を掲げた。看板だけに終わらぬよう、候補者の発掘からキャリア形成への支援まで、体系的な取り組みが問われる。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2023年9月20日7時28分 投稿
    【視点】

    ■女性の未来、希望を蹂躙する岸田の暴挙を徹底的に糾弾せよ!  国民の怒りは燎原の火のように燃え広がっている。党幹部、閣僚に女性が増えたことは評価できる。ただ、副大臣・政務官に女性ゼロは断じて許してはなるまい。実質後退である。岸田は絶対に許

    …続きを読む

連載社説

この連載の一覧を見る