(社説)政権と教団 「決別」の意思は本物か

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 岸田首相が内閣改造後の記者会見で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求について、詰めの検討をしていることを明らかにした。

 請求の有無は、教団への質問権の行使や被害者への聞き取り調査などで集めた証拠に基づいて、判断すればよい。ただ、長年にわたって関係を続けてきた自民党が、真に教団と「決別」するには、過去の検証と真摯(しんし)な反省が不可欠なことを、首相はわかっているのだろうか。

 改造内閣には、党の昨秋の「点検」に対し、教団との接点を認めた4人が起用された。盛山正仁文部科学相と木原稔防衛相は、関連団体の会合に出席して、あいさつや講演をしたことがあった。鈴木淳司総務相は関連団体のイベントに祝電を打ったり、会費を支出したりしていた。伊藤信太郎環境相も関連団体への会費の支出があった。

 4閣僚とも、就任後の記者会見で、関係は絶たれていると述べている。ただ、首相が任命に際し、個別に確認することはなかったようだ。党の点検を受けて、決別を徹底しており、今は誰も教団と関係をもっていないことを前提に人事を行ったという。

 党の点検はあくまで自己申告であり、調査項目も十分とはいえない。昨年の内閣改造では、再任させた山際大志郎経済再生相に、新たな接点が次々と明らかになり、事実上の更迭を余儀なくされてもいる。事前に改めてチェックするのが当然ではないか。解散命令請求を担当する文科相は、とりわけ厳しい吟味が必要なはずだ。

 選挙でボランティア支援を受けたり、教団主催の会合に出席したりするなど、教団との深い関係が指摘される萩生田光一政調会長をそのまま続投させたのも、政権基盤の安定にしか目を向けていない証左といえる。

 驚くのは、首相が萩生田氏を、政権の要であり、スポークスマンでもある官房長官に起用することを検討していたことだ。党と教団の関係は過去のものと、たかをくくっているとしか思えない。

 しかし、教団票の差配をしていたとされる故安倍元首相が果たした役割も、教団の名称変更の経緯も、いまだ解明されてはいない。

 深刻な社会的問題を抱える教団にお墨付きを与えたり、選挙に利用したりしてきたことを本気で反省するなら、過去にふたをすることは許されない。解散命令請求に踏み切ったとしても、それだけで、自民党がけじめを果たしたことにはならない。

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年9月16日16時45分 投稿
    【視点】

    岸田首相は内閣改造についての記者会見の冒頭発言の最後で、わざわざ「この問題にしっかりとした結論を出すべく最後の最終の努力を進めてまいります」と強調しています。その姿勢にどうしても、ご都合主義と胡散臭さを感じます。  旧統一教会を宗教法人と

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